娘にとっての小学校生活最後の運動会が先日執り行われた。5年前の小さな姿からは想像できないくらい大きくなった姿に感動し、涙腺が緩みかける。
はたして娘はどれくらい成長したのか。かけっこは下から何位なのか。応援団としてチームを活気づけられるか。騎馬戦や組体操で怪我をしないだろうか。
そんなことを考えながら、ハッとする。知らず知らずのうちに、「赤白どちらの方がチームワークがよさそうか」「誰が全体を引っ張っているリーダーなのか」という我が社の生業である所謂『人材評価(人材アセスメント)』の視点で 運動会に臨んでいる自分がいるではないか。
せっかくの休日に、と思いながらも、運動会を改めて観察してみると、「人材アセスメント」に重要な要素が揃っていることに気づく。むしろ、子供たちの個性や適性がよくわかるという面で、非常に興味深いものであったため、今回のコラムでは、その考察を紹介してみたいと思う。
まず、アセスメントを行う上で重要なのが「状況設定」である。運動会で再現される特徴的な状況としては以下のようなものが一例として挙げられるだろう。
これらの様々な状況の中で(Situation)、明確または不明確な役割を各自が担い(Task)、力を合わせて取り組んでいくことで(Action)、チームの勝利を目指す(Result)。
まさにアセスメントの根底を為す「STARコンセプト」が存在し、さらには、「力を出し切る」というモチベーション要素も併せ持つ、アセスメントを行う上で最適な舞台が運動会には整っているのである。
当然、父兄席という遠方からの観察ではあるため、個々の発言や細かな表情までは掴むことができないが、だからこそ、誰が場の中心になっていて、誰の発言や行動が、全体に影響を与えているのかがよくわかる。
特に、逆境の時ほどその傾向が顕著に現れる。
そんな子供たちの姿を見ていると、涙が溢れてくる。
我が子については、全体を引っ張るような存在ではなかった。しかし、騎馬戦で馬が崩れてしまい負けてしまったときにも、メンバー同士で声を掛け合い、チームの応援を必死で行う姿を見たとき、 「あぁ、本当に大きくなったなぁ」と娘の成長に感動した。
「今、自分にできることに全力を尽くす」
簡単なようで、なかなかできないこと。結果はともかく、小学校生活で学んだ集大成が娘の行動に出ていたと思う。夕食を家族でとりながら、「よく頑張ったね」とフィードバックした。
いまビジネスの現場では、如何にして「優秀なリーダーを選ぶか」が重要な課題となっている。裏を返せば、リーダー不在を嘆く傾向が多くの企業で見られ、当然、人が育ちにくい社会や教育の在り方にまで問題意識が向かうことが多い。
たしかに、日本の学校教育の在り方には賛否があるだろうが、少なくとも私が自分の目で見た運動会という「アセスメント環境」では、素晴らしい素養を持った未来のリーダーの卵が溢れているのだ。むしろ問題は、それを活かしきれない社会、まさに私たち大人の側にあるのではないだろうか。そんな思いになった小学校最後の運動会であった。
最後に、あるサッカー選手の言葉を紹介し、今回のコラムを締めくくりたい。
『頑張るのは常に“いま”』
「自分にいま、何ができるか」が我々に問われている。