アセスメント研修の評価結果をそのままにしていませんか?
アセスメント研修とは、受講者本人が既定の設問に回答し、その結果がレポーティングされる適性検査とは違い、外部の専門家が受講者の言動に対し多面的かつ複眼的に行動分析・評価を行っていくため、職場では見えていなかった情報を把握することができます。
他方、昇進昇格試験の一環としてアセスメント研修を導入している場合、その結果を昇進昇格の判断材料以外にほとんど活用できていないという話をよく耳にします。これは非常にもったいないことで、改善の余地があります。
本コラムでは、アセスメント研修後のフォローや評価結果の活用事例をご紹介したいと思います。
この記事の著者
株式会社リードクリエイト
ソリューション事業本部 ソリューションパートナー室
川島 紀代
2000年よりリードクリエイトに参画。プランナーおよびキャリアコンサルタントとして、個人と組織の成長を支援に携わる。アセスメントプログラムや研修を通じて、個人と企業が持続的に成長できる環境作りを目指し、柔軟かつ戦略的なアプローチを提供する。
アセスメント研修の実施は「終わりではなく始まり」
アセスメント研修の導入目的には、以下のようなものがあります。
- 昇進昇格試験
外部の視点で、客観的かつ公平な判断材料として用いる - 既任管理職の育成
管理職のあるべき姿と現状のマネジメント行動とのギャップを認識し啓発課題を明確化する - 管理職候補者の育成
将来求められるリーダー像やリーダー行動を理解するとともに、現状とのギャップから今後の成長課題を特定する - 次世代リーダーの選抜・育成
経営幹部候補の選抜や幹部候補育成プログラムの一部として用いる(自己理解のセッションなど) - 効果測定、成長確認
一連の研修プログラムや何らかの施策の前後に実施し、成長や変化の度合い(ビフォーアフター)を測定する
多くの企業が上記のような目的でアセスメント研修を実施していますが、その後のフォローや評価結果の活用は不十分なようです。
例えば、研修後に提供される各種レポート等も、受講者へ評価結果を伝達するだけで終わってしまうと、本人は評価を受けただけの感覚に陥り、自身の成長に向けた振り返りや内省を阻害し、今後のアクションには至りづらくなります。要は、適切なフォローアップがなければ、せっかくのアセスメントが単なる試験(イベント)に終わってしまうのです。アセスメント研修の本当の価値は、その結果をいかに活用し、フォローアップするかにかかっていると言えます。
また、アセスメントデータは、受講者への成長支援だけでなく、組織課題の解決にも活用することもできます。外部の客観的視点で評価するアセスメントデータは、社内で何となく課題だと思っていることを定量的かつ定性的に示すことができます。そのデータを用い、その後のアクションへと繋げることが課題解決への第一歩となります。
フォローアップの効果を実感する
効果的なフォローアップによって、受講者はアセスメント研修で得た気づきを日々の業務に活かすことができ、企業は人材育成の成果を高めることができます。
1. 従業員の成長とスキル向上
アセスメント研修で客観視された能力や行動に関するフィードバックを受けることで、受講者は自分の傾向性(強みと啓発点)を明確に認識できます。このフィードバックに基づいて、具体的な行動計画を立て、自己成長を図ることができます。
2.組織パフォーマンスの向上
アセスメント研修で得られたデータを活用して、組織全体のパフォーマンス改善に役立てることができます。組織としての課題やギャップを埋めるためのフォローアップ施策、受講者個々へのコーチングなどを実施することで、組織の全体的な生産性が向上します。
3. 組織文化の強化
フォローアップのプロセスは、組織全体で継続的な学習と改善を促進します。これにより、学習文化やフィードバック文化が根付き、組織はより競争力を持ち、柔軟に変化に対応できるようになります。
個人の成長に向けたフォローアップの例
アセスメント研修実施後のフォローは、どのような取り組みが行われているのでしょうか。個人向けとしては、以下のようなものがあります。
上司の活用例
1on1ミーティングで活用
上司は評価結果を用いて、メンバーの今後の能力開発、パフォーマンスの改善、キャリア支援等に活用することができます。上司からの適切なフィードバックは、メンバーが自己認識を深め、強みの伸張、弱みの克服など目標を設定する際の指針となります。
目標設定後は、行動計画を達成するためにどのようなサポートが必要かを確認し、リソースの提供やトレーニングの機会など必要な支援を検討し、提供できるものは積極的にサポートすることが必要です。
本人の活用例
自己成長、キャリア自律に活用
自身の強みを最大限に活かせるタスクやプロジェクトに挑戦したり、逆に、改善点の克服が期待できるタスクやプロジェクトに参画したりするなど、自身の今後の成長に向け、何に取り組んでいくのかを検討する際に活かします。
基本的には、改善点に着目しすぎず、強みをベースにしたキャリアの方向性を検討していくことが良いと考えます。
会社の活用例-1
継続的な学習機会の提供
会社としては、アセスメントで明らかになった課題やスキルギャップに対応するため、継続的な学習機会を提供する必要があります。
例えば、全体のアセスメントデータから抽出した組織課題を克服するためのスキルアップ研修、各個人それぞれの成長課題を強化するための選択型研修、さらには次世代リーダーの育成と実践課題への取り組みを兼ねたワークショップなど、手法や内容はさまざまです。
いずれにしても学習は一度きりのイベントではなく、継続的な施策としての展開が望ましいと考えます。
<参考>課題別フォローアップ選択型研修
会社の活用例-2
メンタリングとコーチングの提供
経営幹部候補育成といった上位階層の育成については、メンターや外部のコーチを割り当てることで、長期的なフォローアップが可能になります。
メンターやコーチは、日常業務の中でどのように能力を磨いていくかについて具体的なアドバイスを提供し、対象者の成長を支援します。
組織施策への活用事例
アセスメント研修の全体結果データを分析することで、組織が抱える具体的な課題を抽出し、対策や戦略的アプローチに活用することができます。
1.教育体系構築(見直し)への活用
アセスメントデータから、組織全体や対象層ごとの強みと弱みを把握できます。これにより、どの能力の強化が必要が見えてきます。また経年比較することで、現在の教育体系の効果性も確認できます。もし継続的に施策を講じているにも関わらず、能力やスキルが伸張していないのなら、内容や方法を変える必要があるかもしれません。
2.組織戦略、組織文化への活用
組織のビジョンや戦略の実現に向けて、現状の人材リソースでそれらが達成できそうか、難しい場合はどのような改革・改善策が必要になってくるのかについて、アセスメントデータを用いて検討を進めることができます。自社に脈々と受け継がれる良いものは残しつつ、成長に向けて阻害要因となっているものを特定し、変革に向けた取り組みを進めていくことに活かせます。
3.人材戦略への反映
中長期視点に基づいた人材戦略やサクセッションプランを検討するにあたってもアセスメントデータが活用できます。将来、必要になってくるポジションやリーダー人材を予測し、その候補を見極めたうえでプールし、体系的な育成施策を展開していくなど、組織の持続的な成長を支える人材の育成が可能になります。
まとめ
アセスメント研修は、優秀な人材を見極めるための有効な手段ですが、その効果を最大限に引き出すためには、適切なフォローアップが不可欠です。企業が評価結果を積極的に活用し、参加者の成長を支援することで、組織全体の成長と競争力の強化が実現します。
アセスメント研修を単なる評価の場に終わらせず、成長へのステップとするために、フォローアップにも力を入れてみてはいかがでしょうか。
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