次世代リーダー育成コンサルティングに関する5つの観点

2023.09.22(更新日:2024.04.01)

経営のバトンを誰に託すか。
人材における最重要課題とも言える次世代リーダーの育成については、多くの企業が本腰を入れて取り組んでいる一方で、苦戦しているという相談を受けるケースが増えています。為すべきことは多岐に渡り、相応の費用や時間、そして覚悟を要する領域だからこそ、外してはならない本質について考えてみたいと思います。

POINT1. 経営トップのコミットメント

次の経営を担う人材を育成していくうえで最も重要なことを一つ挙げるとすれば、それは「経営トップのコミットメント」です。自身の在任期間が終わる前に、どれだけの次世代経営候補人材を育成できているかは、歴代の経営トップの責任です。一方で、次世代経営人材の育成施策が機能している組織に共通することは、経営陣と人事が同じビジョンを共有し、同じ熱量をもってコミットしているということです。そのため、「運悪く」現経営トップのコミットメントが低い場合において人事が為すべきは、まずは経営トップとの対話であり、その先にある巻き込みであると考えます。

対話の量

次世代リーダー育成やサクセッションに関する日々の対話がどれだけ行われているかは、経営や人事のコミットメント度合いを測る一つの目安です。当然、担っている自身のポジションや役割にもよりますが、役職上位者ほど、人事部内および経営会議などの場面での対話量を意図的に増やしていく必要があります。まずは関係者間における経営課題の認識として、経営人材の育成が上位にあるという状態をつくることがスタートです。

対話の質

対話の質を換言すると、「取り組み状況の進捗・状態の共有」と言えます。次世代経営人材の育成に対する問題意識は、経営および人事に携わる以上は、共有の認識として持てるはずです。一方で、問題意識が意識のままでは何も解決しないため、具体的なプランに落とし込み、その進捗や成果に対して議論することが重要です。そのため、当然ではありますが、次世代経営人材を如何にして育成していくかという大きな方針やビジョンが必須であり、そこに向かう過程にこそ、対話の質を高める本質があると考えます。

私たちができるご支援

多くの企業から相談を受ける中において、最も多くかつ本質的な相談は、経営トップと人事間の対話機会の創出です。外部の人間だからこそできる支援としては、今後の人事方針や育成方針に関するヒアリングや、管理職層のアセスメント結果の報告を通して、人事担当者と共に経営トップとの対話機会を企画し、次世代経営人材の育成に関わる問題提起を行うことが可能です。経験上、経営陣の皆様は、各階層における優秀人材が誰なのかということに対し、想像以上に興味・関心を持っているため、「人事からの有益な情報の報告を待っている」ように感じます。

POINT2. リーダーが輩出される戦略的な仕掛け

次の経営を担う人材が自然発生的に育ってくる状態は、ある意味では理想かもしれませんが、人事が目指すべきは再現性のあるリーダー輩出の仕掛けです。そのためには、「母集団形成に向けた全体を俯瞰する大枠の取り組み」と、「候補者個人に焦点を当てた個別の取り組み」の両輪を見据えることが重要です。前者はマクロ視点と言い換えられますが、その中でも特に「核となる施策」を明確にしておくことが重要です。一方、後者はミクロ視点と言えますが、マーケティング用語でいう「ペルソナ」を設定しておくことが重要です。

取り組みにおけるレバレッジポイント

次世代リーダー人材を育成していくうえでの大枠の方針や計画を立案することの重要性は、特に論じる必要はないと考えますが、「どこの何を起点にして着手するか」というレバレッジポイントが不明確なままスタートさせているケースに遭遇します。あるタイミングでの抜擢なのか、一定の母集団形成後の特別な経験の付与なのか、早期選抜による別ルートでの育成なのかなど、自社の施策において最も大きな影響を及ぼすであろう取り組みを明確にし、候補となる人材のコミットメントを生み出すことが重要です。

ぺルソナ設定による理想の成長ストーリー

次世代リーダー育成の究極的ゴールが、「次の経営トップを誰に託すか」という人選である以上は、「誰」という固有の人物像に対する解像度を高めておくことが重要です。その人物は、どのような特性を持っているのか、どのような経験を積んできたのか、そしてどのような価値を生み出す人材なのかという具体的イメージが明瞭なほど、為すべき手段も明確に定められます。「なんとなく優秀な人物」では施策も曖昧になってしまうため、ぺルソナ設定による理想の成長ストーリーを思い描いておくことが重要です。

私たちができるご支援

最終的には、経営トップをはじめとする重要なポジションを誰に託すかという意思決定をする以上は、「誰かを選ぶ」という行為が必須になります。私たちができることは、この「選ぶ」という人選におけるサポートです。要件の設定や、人選プロセスの設計、特定領域の適性評価など、「リーダーの選び方」に関するコンサルティングを展開することが可能です。

POINT3. 次世代リーダーに求める要件の設定

多くの企業におけるリーダーの要件設定のご支援を通じて言えることは、表現上の違いはあれど、本質的に求めている要素は共通する何かがあるということです。当然、業界特有の専門知識は別ですが、リーダーという個人に内在する資質や能力といった土台部分には共通点があります。一方で、各社の違いとして現れるのは、そこに対する想いや価値観に代表される企業の特色であり、重要な意思決定において何を最も重視するかという判断基準になるものです。いずれにせよ、「あれもこれも」という総花的なものよりも、どれだけメッセージ性が高いものとしてシンプルに設定できるかが重要であると考えます。

土台となる要件

リーダーに求める土台となる要件とは、端的に言えば「能力」です。組織や事業の現状と未来を見据える力、向かうべき方向性を描き出す力や、ステークホルダーに影響を与え組織を活性化する力、困難に立ち向かい成果を導き出す力などが代表的ですが、業界や規模、地域などに関係なく、経営リーダーが保有すべき能力を特定することが重要です。繰り返しになりますが、数百社のコンサルティング経験の中で言えることは、この土台となる能力については、一定の共通点があるということです。

個性としての要件

各社の違いとして出てくる要件とは、その組織が持つ特有の「らしさ」です。大変革期においては、この「らしさ」が足枷になるリスクもありますが、創業来、社員が大切にしている価値観や風土を体現している代表的人物が未来の経営を担うことで、その組織が代々積み上げてきたブランドを継承していくことができるのだと考えます。「優秀なら誰でも良いのか?」という問いに対する解でもあり、どのような人物に未来の経営を任せたいのかというメッセージを多くの社員が賛同できる言葉として言語化することが重要です。

私たちができるご支援

リーダーに求める要件設定をお手伝いする際に私たちが大切にしていることは、「フィット感」です。要は、関係者の総意として、「こんな人物に経営の重要なポジションを任せたい」と思えるかどうかが重要であり、そこへのフィット感がないと、誰もコミットできないからです。そのためにも、私たちが有するリーダーシップモデルを提示しつつも、その上位概念となる人材像については、相応の時間をかけた対話によって創り上げていきます。

POINT4. 成長機会への環境投資

次世代経営人材の育成において、その効果を左右することの一つが「実業における経験の付与」です。リーダー育成、中でも経営に近いポジションを担う人材の育成については、経験に勝る成長機会は存在しません。一方で、環境を付与することができても、そこで何を学び、何を糧とするのかは、それを経験した当事者に委ねざるを得ません。そのため、人事が見据えるべきは、「コントロール可能な環境の提示」と、「コントロールできない経験からの気づき」であり、注力すべきは前者です。

成長を促進する3つの要素

コントロール可能な環境の提示において、成長を促進する3つの要素を押さえることが重要です。少なくとも、将来経営トップを担える人材を育成するためには、順風で何ら問題のない環境では意味を成しません。身を置くべきは、「①未経験な領域で、②逆境・困難下において、③最終的な責任が求められる」という3つの要素を満たしていることが重要です。それは新規事業の立ち上げでも良いですし、立て直しが必要な部門責任者でも構いません。大切なことは、上記の3つの要素が大なり小なり含んでいる環境に身を置き、リーダーとしての素養を磨く経験を積ませることです。

成長を阻害する3つの要素

一方で、コントロール可能が故に、ミスリードしがちな3つの要素にも触れておきます。次世代の経営リーダー候補人材に不足感があるという相談を受けた場合において、最初にメンテナンスすべき観点とも言えます。概ね、以下の要素が複合的に合わさっている場合は、リーダーが育っていないという結果に繋がってしまいます。

 ① 過保護な環境(与えすぎる、意思決定範囲の制約が大きい)
 ② 正解を求めすぎる環境(減点主義、厳格主義)
 ③ 意思が出せない環境(経営陣の過度な介入、忖度の風土)

経験からの学びを阻害する上記について、自社の実情に照らし合わせてみることが重要です。

私たちができるご支援

この領域においては、大きく2つの観点でのご支援が可能です。一つは「有益な経験が詰めるポジションの特定」であり、もう一つが「個別プロファイリングに応じた適切な環境付与の助言」です。前者は、ジョブディスクリプションが明確に定められている企業では不要かもしれませんが、どのような経験を積ませられるかまでは明確になっていないケースもあるため、改めて次世代経営人材の育成という観点において、それぞれのポジションの特性に合わせた経験を抽出するご支援が可能です。後者については、アセスメント結果等を活用し、候補者一人ひとりの特性や成長課題にあった経験を特定するサポートを行うことが可能です。

POINT5. 責任機関の設置とガバナンス

次世代経営人材の育成における最後のポイントは、責任機関の設置とガバナンスです。上述の通り、最終責任者は経営トップが担うべきですが、選任方法やプロセスには公平性と透明性が必須となります。従来のしがらみや慣習によって次の重要なポストが決定するという「目に見えない力」が強すぎると、候補者だけではなく、株主を含めた対外的なステークホルダーからの信頼を得ることは適いません。大切なことは、「本来的に担うべき人材が選任されるかどうか」であり、ガバナンスが取れている状況を作らなければなりません。

諮問委員会の設置(公平性)

ガバナンスの観点では、外部の専門家も含めた諮問委員会の設置も有効です。どうしても、選任する側には候補者に対する情などのバイアスがかかってしまうため、客観的に人物像を見極めることが難しくなります。決して、外部の言いなりなれという話ではありませんが、直接的な利害関係のない専門家からの客観的な考察も十分に参考に入れて議論した方が、効果は高まるものと考えます。候補人材の特性、成長課題など、様々な観点からの議論を行い、次世代経営人材の育成と人選を進めていくことを推奨します。

認定フローの明確化(透明性)

次の経営トップを担う人材の人選については、入社年次による順番や、暗黙的に決められている序列(●●出身者など)、そしてOBの介入などが現実問題として考えられます。これは、組織によっては簡単に解消できる問題ではないと理解しつつも、取り巻く環境の変化と、その変化の中で生き残っていくためには細事であるという覚悟も必要だと思われます。日本的経営の見直しが叫ばれている中においては、究極的な経営トップの人選こそ着手すべき事案であると考えます。

私たちができるご支援

あくまで私たちは、「外部の人間」という立場を最大化するべきであると考え、諮問委員会のファシリテーションをご支援することが可能です。特に、アセスメント結果による客観的考察は、「社内の人間」が気づきにくい領域のポテンシャルデータを提示することができます。結果として、「意外な側面」への気づきとなり、個々の人材をどうすべきかという建設的な議論を誘発するサポートに繋げることに価値があると考えます。

まとめ

  • 経営トップを如何にして巻き込むか
  • 核となる施策の特定とぺルソナ設定の重要性
  • フィット感のあるリーダー像の設定
  • コントロール可能な成長を促進させる環境づくりの重要性
  • 公平性と透明性の高い諮問委員会を如何にして機能させるか

この記事では、次世代リーダー育成における重要な5つのポイントに焦点を当てて解説しました。この記事を読んだ方が、少しでも次世代リーダー育成についての理解を深める力になれば幸いです。

リードクリエイトでは、企業や組織の人事部門の方に向けて、リーダーの選抜と育成に関わるソリューションを提供しています。

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この記事の著者

株式会社リードクリエイト 常務取締役 菅 桂次郎

2003年7月よりリードクリエイトに参画。人材マネジメント全般に関わるコンサルティング営業を経て、2014年よりアセスメントサービス全般の開発から品質マネジメントを中心に、リーダー適性を見極めるアセスメントプログラムの進化を目指して活動を展開中。

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