本当に1on1ミーティングは機能しているのか?

2023.07.10(更新日:2024.04.01)

本当に1on1ミーティングは機能しているのか?

近年、1on1ミーティングを導入している企業が増えています。リードクリエイトにも、上司に対して1on1ミーティングのイロハを教える研修を実施してほしいという相談が多くなっています。さて、この1on1ミーティングですが、果たして期待通りの成果は出ているのでしょうか?時間の無駄に終わっているケースはないでしょうか?

「1on1ミーティングの目的に貴社なりのストーリーは存在しますか?」
「本当にこのままその上司に、大切な部下の成長を任せてよいのでしょうか?」

この質問に自信を持って「Yes」と答えられる方は、1on1ミーティングの成果が出ているのだと思います。しかし、「Yes」と答えられない場合は、一度立ち止まり、1on1ミーティングそのものの実施有無、もしくはあり方を見直してみるのもの良いと思います。このコラムがそのためのヒントとなれば幸いです。

増加する1on1ミーティングへの苦情

1on1ミーティングのやり方が分からない上司、1on1ミーティングをやめてほしい部下

最近、多くの企業で取り入れられている1on1ミーティングですが、導入したおかげで上司と部下のコミュニケーションが活性化したなど、コミュケーションの量的側面においては一定の成果が出ていると聞きます。ほとんどの企業が業務の一環として1on1ミーティングを実施している関係上、上司と部下の対話機会が自然と確保されるので、確かに以前に比べてコミュニケーションの量自体は増加していると言えるでしょう(1on1ミーティングにかかる時間という要素を度外視しての話ですが)。一方、1on1ミーティングが上手く機能せず限界を感じているという相談が増えていることも事実です。

  • 「1on1ミーティングをやる意味がわからない」
  • 「1on1ミーティングのやり方が分からない」
  • 「1on1ミーティングで話すネタがない」
  • 「1on1ミーティングは意味がない、やめてほしい」

上司、部下に関わらず、日々人事へは上記のような現場の声が届いていると聞きます。そして、このような現場の声が積み上がり、以下のような問題を引き起こしてるケースも見られます。

  • 「1on1ミーティングが形骸化している」
  • 「1on1ミーティングの効果に差が生じている」

形骸化する1on1ミーティング

最近は部下だけでなく上司もプレイヤーとしてのミッションに従事している場合が多く、上司、部下、双方とも多忙なスケジュールを抱えています。そのため、1on1ミーティングの時間を確保することが難しい、また、煩わしいと思い、中には一方的な業務報告や業務の進捗確認に終始してしまうこともあるようです。十分な時間を1on1ミーティングに割けないこと、集中して取り組めないことで、深い対話や戦略的な議論ができないままの面談が続いてしまい、部下の成長やパフォーマンスの向上までには辿り着けない状況になっているのでしょう。場合によっては、1on1ミーティングに見切りをつけ、実施自体を行わなくなるケースもでてきています。また、「人事から1on1ミーティングをするように言われたので、何となく実施している」というように、1on1ミーティングの本質的な目的を理解しないまま実施しているケースもよくあると聞きます。

上司により、効果に雲泥の差が

上司と部下の間には、必ず権力や階層の関係が存在します。このような関係性の基では、部下が自由に意見や悩みを述べることが難しくなる場合があります。部下は、無意識のうちに上司の評価や影響力に配慮しながら意見を述べる傾向があり、その結果として本音のコミュニケーションや建設的な対話が制約されてしまいます。このように上司と部下の関係性に壁がある場合、いわゆる信頼関係が構築できていない場合は、1on1ミーティング本来の目的である部下の成長支援が十分に実現されない可能性があります。また、1on1ミーティングを部下の成長につなげるためには、上司のコーチングスキルやフィードバックスキルなど、非常に高度なコミュニケーションスキルが必要となります。

1on1ミーティングの成果を左右する3つのポイント

1on1ミーティングが機能しない原因

前述の「1on1ミーティングが形骸化している」「上司により効果に差が生じている」という問題について、その原因はどこにあるのでしょうか。ポイントは次のとおりです。

  • 1on1ミーティングに対する意識的側面
  • 1on1ミーティングを実施するうえでの知識・スキル的側面
  • 1on1ミーティングを実施するうえで前提となる上司と部下の信頼関係的側面

まずはこれら3つの側面から現状を見直し、自社の改善点を洗い出すことが肝要であると考えます。

1on1ミーティングの目的をストーリーで語る

1on1ミーティングに対する重要度の認識が、個々人で異なる現状が見受けられ、それが施策の形骸化や効果の差を引き起こす原因の一つではないかと考えます。もちろん、導入している企業が何もしていないわけではありません。全社的に説明会を行ったり上司に対して研修を行ったりと、様々な浸透施策を講じていますが、その認識の差はなかなか埋まらないようです。このような場合は、「1on1ミーティングの目的を自社なりのストーリーとして語ることができるか」という視点で、1on1ミーティングの位置づけを整理し直すことが重要だと思います。

例えば1on1ミーティングで成果を出したヤフー社の場合、当時の提供サービスの中心はPC関連のサービスでしたが、iPhoneの浸透によりPCからスマホへとサービス需要が変換されつつある状況でした。この状況下で生き残っていくためには、組織体制の刷新が必要不可欠ということになり、「脱皮しない蛇は死ぬ」という過激なスローガンを旗頭に、会社のミッション・ビジョン・バリューも刷新したようです。そして、それに続くいくつかの戦略の一つに「人財開発企業」に変貌するという方針を掲げ、人財開発を「社員の才能と情熱を解き放つ」という方向性でやっていくと決めました。そのためには経験学習が重要であり、経験学習を効果的に回すために1on1ミーティングを実施する。このようなストーリー展開のもと、1on1ミーティングという施策を実行に移していきました。

このところ、他社と同じように導入すれば自社も同じ効果が得られる、上司と部下のコミュケーションを促進するためには1on1ミーティングを導入するしかないといったような、導入目的が安易かつあいまいなケースが多いのではないかと感じます。何も1on1ミーティングに限ったことではないですが、施策の目的をストーリーとして組み立て、それを従業員に語ることが、その施策の重要性を認識させ、主体的に取り組むために不可欠な要素だと思います。

1on1ミーティングは「経験学習」を促進させるもの

本来、1on1ミーティングは「部下の成長」に主眼を置いて実施するものです。より具体的に言うと「部下の経験学習を促進させる」ためのものです。

経験学習とは、具体的に経験したことを振り返り内省し、そこから得られた教訓を引き出し新たな状況に活かす、というサイクルを回しながら学習していくことを言います。この経験学習において「振り返り内省する」「教訓を引き出す」という領域の精度を高めることが、1on1ミーティングが担う本来の役割です。まず、この前提を理解していない上司が多いことが、1on1ミーティングの効果に差が生じている大きな原因だと思います。

ただし、経験学習の要素を理解しているからといって、1on1ミーティングが上手くいくわけではありません。1on1ミーティングの中で経験学習を実践するためには、コーチングスキルやフィードバックスキルなど、非常に高度なスキルが必要となります。「知っている」と「できる」はイコールではありません。

よって、上司に対してスキル獲得のための手を打つか、現実的ではないかもしれませんが、スキルを身に着けている上司に1on1ミーティングを担わせるかなど、何かしらの策を考えなければなりません。それだけ難易度の高いことであると認識すべきでしょう。特に、会社からの期待が高く、将来のリーダー候補と思われるような優秀な部下であればあるほど、注意が必要です。

リーダー育成においては「リーダーはリーダーにしか育てられない」ことだとも言われています。いずれにしても、上司だからと言う理由だけで、1on1ミーティングを行うのは非常に危険なことです。

一丁目一番地は上司と部下の信頼関係

上司と部下の信頼関係があってからこそ、1on1ミーティングが成立すると言えます。言うまでもなく信頼関係は一朝一夕で築き上げられるものではありません。日々の関わりの蓄積が、信頼関係を作り上げていきます。上司が思っている以上に、部下は上司のことをよく見ています。公平であるかどうか、言動に一貫性はあるかどうか、誠実であるかどうか、気持ちを汲んでいるかどうかなど、部下は上司の「人となり」を日々見極めようとしています。部下の目利きにかなわない限り、信頼関係を築くまでには至らず、1on1ミーティングも「ただの面談の場」となってしまいます。言うまでもないことかもしれませんが、上司として部下と信頼関係を築くことは非常に重要な要素です。しかし、こればかりはスキルでどうにかするには限界があります。この人材は上司としてふさわしい人となりを備えているかどうか、管理職としてふさわしいかどうかの見極めが重要でしょう。

1on1ミーテイングに頼り過ぎていないか

マネジメントスタイルの変化は必須ではあるものの・・・

変化のスピードは依然早く、先行きが不透明な環境に拍車がかかっています。これまでの経験から導き出された勝ちパターンはもはや通用せず、上司が解を持ち合わせていないことも多くなってきています。

また、日本の労働市場は多様性が益々増し、異なる年齢、性別、国籍、文化的背景など、多様なバックボーンを持つ従業員が様々な職種や組織で働くことが普通になってきました。ビジネスパーソンの仕事や働き方に対する価値観の多様化も進み、ワークライフバランスを重視するビジネスパーソンや自身のキャリア志向に合わせて転職も厭わないビジネスパーソンが増えるなど「カネ、モノ、地位などの外的価値を重視する傾向」から「幸せや健康などの内的価値を重視する傾向」へと変わってきています。

加えて、コロナ禍によるテレワークは上司と部下とのコミュニケーション不足を引き起こし、さらに、人的資本経営やジョブ型人事制度、エンゲージメント指数による組織の評価などメガトレンドも重なり、混沌とした状況は加速化しています。

しかしながらこのような変化の激しい環境であっても、企業は価値創造を実現し競争に勝ち残っていく必要があります。そのためには従来のマネジメントスタイルでは難しいでしょう。個々人の主体性、創造性が最大限発揮できるよう、従業員一人ひとりと向き合い、異なる価値観・考え方を持った人材を活かすマネジメントへと変化させることが求めらています。

1on1ミーテイングは万能薬ではない

従業員一人ひとりと向き合い、一人ひとりを活かすためのマネジメントスタイルへと変化させるための一つの施策が、1on1ミーティングであることに疑いの余地はないと思います。

しかし、極端な表現の仕方かもしれませんが、最近の動きを見ていると、「とりあえず1on1ミーテイングを導入しておこう」といったような、安易な展開が目立つように思えます。何から何まで1on1ミーテイングに頼り過ぎているような気がしてなりません。

先に述べたように、全体感を持って個々の施策と目的のストーリーを明確に描き、それらが機能して初めて意図した成果へと到ることができます。1on1ミーテイングは万能薬ではないことを肝に銘じるべきでしょう。

 

この記事の著者

株式会社リードクリエイト
プロダクト統括本部 プロダクト推進室 マネジャー
角 美寛

2008年1月よりリードクリエイトに参画。2022年3月まで一貫して営業畑を歩み、大手企業を中心に顧客の人事・人材育成上の課題解決に従事。2022年4月よりアセスメントプログラムの品質管理や新たなソリューション開発、販売促進施策の展開をメインに活動中。

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