管理職登用アセスメントを導入する際に押さえるべき観点

2022.10.20(更新日:2024.04.01)

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管理職登用で測定すべき領域

管理職登用時に、アセスメントセンターと呼ばれるシミュレーションを使った研修形式のアセスメントプログラムを導入する際、基本的には対象者のマネジメント能力を把握することが主目的となります。「名プレイヤー、名監督にあらず」という言葉があるように、現在の職責や職務でのパフォーマンスと、今後期待される職責や職務でのパフォーマンスが大きく変化する局面では、後者の適性を見極めることが重要です。そのため、プレイヤーとしての一定の基準を満たした候補者に、将来の管理職としての役割を疑似体験してもらい、そこで発揮された行動から、今後の新たな役割の中で、どの程度の活躍が見込まれるかを判断していきます。

一方、管理職適性とリーダー適性を分けて考える傾向は大企業を中心に未だ根強く残っており、「課長=成果やチームを管理する人」という発想のまま、評価指標が設計されることがあります。課長や部長という肩書そのものに影響力があることは事実ですが、組織のマネジメントはあくまで能力で行うものです。これまでのやり方が必ずしも正解ではない環境下においては、「部下を指導し、管理する」のではなく、新たな価値の創出に向けて、常に新たな視点で物事に関与していくことが重要であり、問われるのは管理監督者としての関わりではなく、リーダーとしての行動であり能力です。

自社が掲げている昇進昇格時の評価項目や、アセスメント実施会社が提案してくる評価項目を確認し、設定されている項目から浮かび上がる人材像が、リーダーとしての素養を表現できているかを見極めることが重要です。

評価の信憑性を見極めるための5つの観点

管理職登用におけるアセスメントの本質は、将来のパフォーマンス予測であり、人材投資の判断です。それは同時に、評価される側の社員にとっては、今後のビジネス人生を左右する重要な機会でもあります。そのため、最も大切なことは、評価結果そのものに信憑性があるかであり、評価の精度を見極めることが重要となります。外部機関を選定する際、以下の5つの観点を必ず確認することが肝要です。

<アセスメント会社を見極める5つの観点>

観点

概略

1.評価思想

何の、どのような要素を測定するのかという根底にある評価思想。管理職やリーダーをどのように定義し、知識、能力、スキル、パーソナリティ、性格特性などの要素を管理職登用判断時に測ることが、なぜ重要だと考えているのかを確認。

2.評価メソッド

必要な評価要素をどのような手法やツールで測定するのかという評価メソッド。評価結果の妥当性や信頼性を担保するための枠組みや根拠、メソッドのコアとなる部分の体系性や再現性が確保される仕組みがどのように為されているかを確認。

3.アセッサーの専門性

評価者であるアセッサーの質。シミュレーション等を使ったアセスメントプログラムでは、アセッサーの専門性やチーム力がそのまま評価の質に影響する。どのような訓練を積んでいるのかなど、アセッサーの品質担保の取り組みを確認。

4.評定プロセス

プログラム当日の評定手順。シミュレーションの運営から観察記録の収集方法、評定の仕方や手続き、評点の最終確定までのプロセスを確認。ここが曖昧だと実質的な評価の品質は確保できない。

5.実績

どの程度のクライアントで実績があるかの確認。守秘義務内で開示可能な範囲になるが、クライアント数や受講者数が信憑性の証左となる。

導入から運用までのステップ

管理職登用のアセスメントプログラムについては、候補者の選定から最終的な登用者の確定まで、数か月間にわたって運用されます。また、初めて導入する場合には、社内各所への説明や稟議も発生するため、プログラム実施の1年前から動き出すことを推奨しています。依頼先の候補会社が絞られてきた段階後のステップは概ね以下の通りです。

管理職登用アセスメントを導入する際に押さえるべき観点

STEP1:導入目的・期待値調整

アセスメントの結果を活用する範囲を明確化する。
昇進昇格の判断に限定するのか、サクセッションプランまでを含めるのかなど、結果データを開示範囲、活用範囲を確認。また、昇進昇格の試験なのか能力開発も期待する研修なのかなど、アセスメント導入の総合的な目的や期待値を確認する。

STEP2:昇進昇格の全体フロー設計・確認

候補者の選定から最終的な昇進者、昇格者の確定までの全体フローを設計・確認する。
外部機関によるアセスメント結果の位置づけや、結果データの反映範囲や比重など、最終選考までにどのようなフローで候補者を絞り込んでいくかの全体像を確認する。

STEP3:評価項目・プログラムの確定

アセスメントプログラムで測定する評価項目を設計する。
自社の制度上で運用されている指標を用いるか、アセスメント実施会社の指標を用いるかの二つの選択肢がある。マネジメント力やリーダー適性を引き出すための専用のシミュレーションおよびプログラム開発までを含めると、後者を推奨。ただし、自社が運用している人材像と昇進昇格時の評価項目の一貫性やメッセージ性を持たせることが重要。概ね10~20項目を各5~7段階で点数づけを行う。
また、実施後に納品されるデータや報告書のフォーマットも確認。

STEP4:候補者の選定・動機づけ

外部機関によるアセスメントプログラムの受講者を選定する。
所属長推薦や過去実績など、どのような基準で候補者を選定するかを明確化する。また、シミュレーションを使ったアセスメントプログラムという特殊性にも配慮し、受講者や上司を含めた概要の説明を事前に行うことを推奨。

STEP5:プログラム実施・結果データ納品

アセスメントプログラムを実施する。
プログラム日数や参加者数はアセスメント会社によって設定されている。実施形態も集合型やオンライン型もある。実施後は評価結果データやレポートが後日納品される。

STEP6:報告会・意思決定ワークショプ開催

関係者に結果報告を行う。
活用目的や情報開示範囲によって参加者を選定。管理職という組織の重要ポジションを担う人材群の結果であるため、人事部門の責任者や経営陣の参加を推奨。また、結果を踏まえての各種人事施策への展開など、経営課題の解決に向けたディスカッションまで実施することが理想。

結果データの種類と活用の方向性

評価項目やアセスメント実施会社によって納品される結果データは異なりますが、参加した個人の結果と参加者全体の結果の2種類の報告物が納品されることが通常です。

昇進昇格における判断の根拠として活用することは当然として、これらのデータを起点にして、組織に内在している諸問題を改めて議論したり、人事課題の解決に向けた方策を検討したりすることが重要です。

 

種類

活用の方向性

個人結果

評価項目の定量データ
予め設定された評価項目に対する受講者一人ひとりの数値結果。
昇進昇格の判断は、総合得点の高低を一つの基準とすることが多い。一定のラインを合否判定の条件に課し、そこに満たない審議ゾーンは、特定の能力項目の点数などを含め、次ステップに進むかどうかの判断を行う。
また、評価項目それぞれに係数をかけて再算出するなど、各社の運用に応じて設計することを推奨。

プロファイリング
個人ごとの傾向や特性が定性的に表現されたレポート。
定量データだけでは想起しづらい人物像を具体的イメージで捉えることが可能。点数の根拠としても活用できる。受講者一人ひとりの行動特性や傾向が掴めるため、配置や育成にも効果的に活用できる。

全体結果

母集団の定量分析結果
参加者全体の数値結果の集積データ。平均値、最頻値、偏差値など、一定の母集団であれば全体の定量的な傾向も掴むことが可能。各評価項目の高低が、受講者個人の特性に寄るものなのか、対象母集団全体の傾向として言えるのかを定量的に掴むことが可能。研修などの育成施策全体や上司のマネジメント課題を抽出することができる。

考察の結果と課題仮説
定量データから推察される組織風土やマネジメント風土をもとに、経営課題・人事課題の解決に向けた糸口を探ることが可能。正解のない、かつ中長期の取り組みが必要となる領域であるため、経営陣と一体になって仮説検証を行うことが理想。

 

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この記事の著者

株式会社リードクリエイト 常務取締役 菅 桂次郎

2003年7月よりリードクリエイトに参画。人材マネジメント全般に関わるコンサルティング営業を経て、2014年よりアセスメントサービス全般の開発から品質マネジメントを中心に、リーダー適性を見極めるアセスメントプログラムの進化を目指して活動を展開中。

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