管理職登用時に外部機関のアセスメントを導入することの意義と価値

2022.10.27

経営の重要な意思決定に資する情報入手を外部機関に頼る背景

組織の管理職登用という重要な意思決定において、外部の専門機関のアセスメントを導入するケースが増えています。

2000年頃までは、大企業における一括大量の昇進昇格イベントとして、登用時における一定のハードルを設けることによる成長意欲の喚起と、公平性の観点から外部機関によるアセスメントを導入することが主流でした。その大前提は、管理職という組織上の上位ポジションに出世することがビジネスパーソンの成功を示す重要な要素であったことも背景にあります。また、評価される項目や基準も、ピラミッド型組織における管理・監督者に求められる要素が主流であり、「上位方針に沿って、メンバーを指導・育成しながら確実に成果を上げられる人材に必要な能力」にフォーカスされていました。具体的に挙げれば、情報理解力、問題解決力、計画策定力、実行管理力といった的確な指示を出すための思考領域の能力、発信力、部下指導力、交渉力といった関係者に強い働きかけを行う対人領域の能力、執着性、自律一貫性といった逆境下でも目標達成を成し遂げるための姿勢面の能力です。

2000年以降は、「変革」の社会的な大号令の下、経営の在り方そのものが大きく変化し、その結果として成果主義に基づく新たな人事諸制度の導入もあり、働く個人と企業の関係性や雇用に対する考え方も徐々に変わっていきました。リーマンショックなどの世界を巻き込む経済的な出来事に加え、国家を超越するような情報産業企業の出現もあり、日本企業および人材の相対的な競争優位性は低下の一途を辿っているというのが実態です。待ったなしの状況に置かれているのが現在の多くの日本企業であり、「組織を次の成長に導くことができる真のリーダー」を欲しているという社会的背景があります。

このように、時代の変遷とともに、組織における管理職の役割も変化している一方で、どのような人材を登用するかという意思決定の重要度は高まっていると言えます。安定的な環境下でのマネジメントから、変化が常態化している状況下でのマネジメントへと変化していく中、既存の枠組みを超えて新たな価値を創出でき得るポテンシャルを持った人材は誰なのか、という可能性への投資判断としてのアセスメントが主流になってきています。そしてその本質は、社内では「真のリーダー人材を見極めきれない」という問題の表れでもあります。

組織内の心理的な反発

将来の組織発展の鍵を握る管理職層の人選判断を、一部とはいえ外部機関に委ねる行為に、当然ながら反発の声が上がることは起こり得ます。大切なことは、「組織に新たな価値を創出できるリーダーを見極めることができるか」であり、それが内部であれ外部であれ、目利き力を有しているかどうかが論点となります。最も避けるべきは、社内にも社外にもその目利き力がないという状態です。

また、心理的な反発そのものは悪ではなく、むしろ経営上の重要な意思決定に対する当事者意識の現れであるとも解釈できます。まずは自組織にリーダー人材を見極める目利き力があるかどうか、あったとしても選考のプロセスにおいて他の影響が働くなど、適正に選出が為される仕組みや風土が備わっているかという観点で、心理的な反発の背景を客観的に評価することが重要です。

社内評価と社外評価の切り分け

上述の心理的な反発が生じる一番の声は、「外部機関もしくはアセスメントツールでそもそも何がわかるのか?」という疑問です。これまでの実績や働きぶり、勤務態度や人柄は、通常であれば上司の方が把握できているはずです。これらの観点が把握できていないとすれば、上司のマネジメントを見直す必要があると思われます。

管理職の昇進昇格において何を見極める必要があるのか。まずはこの観点を整理すべきであり、その観点の中に、力量的にも風土的にも社内では見極めることが難しい要素があるのであれば、外部の専門機関を利活用することは合理的であると言えます。大切なことは、社内で見極められる要素、見極めるべき要素と、そうでない要素を明確に定義することです。一方で、社内の心情面では、「これまでの功績に対する報い」として昇進昇格を考えてしまいがちです。あくまで登用の考え方は、「期待役割を担えるポテンシャルが備わっているかどうか」を見極めることが重要であり、過去の実績と未来の可能性は、一定切り分けて判断することが重要です。

<社内評価が適している要素>
過去の実績、既存事業の専門性、既存社員との人間関係、会社や事業へのコミットメント度

<社内評価では見極めが困難、もしくは評価がズレやすい要素>
新たな役割遂行の適性、将来のリーダーとしてのポテンシャル

管理職登用における全体プロセスの中の位置づけ

管理職登用時にアセスメントを導入いただいているクライアントでは、概ね以下の5つのステップで最終的な判断までの運用が為されています。

全てを外部の判断に委ねるのではなく、社内外の様々な観点で、期待される人材像の要素を見極めることが主流です。一方で、管理職層の人選においては、リーダーとしての素養を重視する傾向が高まっており、外部機関のアセスメント結果の比重を高めた運用を行うケースも増えています。

管理職登用時に外部機関のアセスメントを導入することの意義と価値

STEP1:所属長推薦

「直近2~3年の人事考課」「等級在籍年数」「上司の推薦状」が主な評価要件となっている。語学力を条件として導入している企業もある。

STEP2:人事部門による絞り込み

手続き上のステップとしている企業と、人事が意思を持って絞り込む企業とに分かれる。前者の背景は、「組織上の相対的な現場の力の強さ(現場>人事)」と「管理職候補者の間口を広げることによる社員全体のモチベーション維持」が主な理由としてあげられる。後者については、「次ステップへの人数制約(ポスト数)による必然性」と「人事・経営と現場の期待人材のミスマッチ」が主な理由としてあげられる。いずれにせよ、選考ステップの全体の中で、人事の初期選考にどのような意図を持たせ、如何に機能させるかが重要。

STEP3:外部評価

アセスメントセンター形式のプログラムの他に、様々な診断ツールや筆記試験を複合的に導入している企業もある。その結果を100%活用し、ある一定のスコアを満たしていないと次ステップに進めないような厳格運用を導入している企業と、外部評価を一定の範囲で利用し、その他の社内評価などを合わせた複合的な判断として用いる運用とに分かれる。

STEP4:面接(人事・役員)

役員との面談や事前に論文を課し、外部評価では判別しづらい「自社へのコミットメント」や「日常の問題意識」から、管理職としての内面の準備レベルを評価している。

STEP5:人事部門による最終選考

手続き上の最終判断ステップ。ポスト数が限られている場合は、資格等級は管理職相当に昇格させるものの、課長職へのポストに就くまでに時間を要する企業もある。その際は、「誰から課長に昇進させるか」の判断を、このステップで行っている。

外部の専門機関が介在することの本質的な価値

物事を外注することの意味は、「できるけど任せる」と「できないから頼る」という二つに分類できます。前者は効率性であり後者は専門性です。右肩上がりの成長で管理職のポストも潤沢にあり、マーケットも追い風で誰が担っても一定の成果が上げられるのであれば、人選に多大なるエネルギーを注ぐ必要はないのかもしれません。一定の納得性と公平性のもと、外部機関のアセスメントを一種のイベントとして効率的に利用することが最善であった時代もありました。

しかし今は状況が異なります。組織の要所に誰を配置するか、重要な意思決定を誰に任せるか、経営資源を誰に預けるかの判断が、10年先、20年先の組織発展に取り返しのつかない影響として反映される時代です。日本を代表する企業において、創業者が何度も経営に返り咲く状況を見るにつけ、次の経営を担うリーダー人材を育てること、見極めることの困難さは多くの人事担当者が痛感していることと思われます。少なくとも、これまでと同じやり方、同じ基準、同じプロセスで人選をした時に、どのような結果が待ち受けているかを想定してみることが重要です。何かを変える場合、特に経営の重要な意思決定における判断プロセスを変える場合、当然のように多くの反発が待ち受けているはずです。組織発展の鍵を握る管理職登用に新たな風を吹かせること。そこが起点となり、「どのような人材を選ぶべきなのか」「本当に見極めるべき要素は何か」「選ぶ前に素養のあるリーダー候補を如何にして育てるか」「採用基準から変えるべきではないか」「人事制度そのものを変えるべきではないか」という、これまで見えていた、誰もがわかっていたにも関わらず着手できなかった(してこなかった)本質的な人事課題に初めて対峙することができるはずです。

いまこそ人事部門が崇高な理念と覚悟のもと、組織変革へのリーダーシップを発揮するときです。

この記事の著者

株式会社リードクリエイト 取締役
菅 桂次郎

2003年7月よりリードクリエイトに参画。人材マネジメント全般に関わるコンサルティング営業を経て、2014年よりアセスメントサービス全般の開発から品質マネジメントを中心に、リーダー適性を見極めるアセスメントプログラムの進化を目指して活動を展開中。