1. 階層を超えて「共通メッセージ」を打ち出す
- いろいろ考えて施策は打っているものの、それらは部分最適の積み重ねで、その場しのぎの施策になっているのではないか
- 学習テーマとして論理思考や問題解決など思考面を取りあげる年度もあればそうでない年度もあるため、職場での共通言語化がなされず実践に繋がらないのではないか
このような問題意識が本事例の出発点です。
そこでまず、リードクリエイトが現状整理に向けて社員へヒアリングを重ねたところ、現場の実態が徐々に見え始めました。
- 「研修はあくまで研修」として捉え、実務で活用するイメージを持てていない
- 研修テーマや内容が頻繁に変わるので、自身への期待が分かりづらい
- 研修前後に職場メンバーからの声掛けや質問などもされない
総じて、研修は「昇格時や役割転換時のイベント」として社員に認識されてしまっており、本来会社が伝えたい期待やメッセージが十分に伝え切れていない状況でした。
これらを踏まえリードクリエイトが提案したのは、「一貫性を持ったメッセージに基づいた階層別研修の刷新」でした。階層ごとに異なるメッセージを発信するのではなく、組織全体で一貫した軸に基づいた研修体系を構築するということです。
メッセージのテーマは「思考力の強化」。その中心に「論理思考」と「問題解決」を据えました。
もちろん、全ての階層で同じ内容を丸写しするわけではありません。テーマは統一しながらも、階層ごとに求める視座を変える設計にしました。若手層は「自分の業務」を、中堅層は「自チーム」を、管理職層は「自組織」を、そしてその先の「会社」へと、考える範囲を段階的に広げていく構成です。
また、研修を単発イベントにしないことも重要なポイントでした。学びと実践を往復するプログラムを描き、「学び → 計画 → 実践 → 振り返り → 総括」のプロセスを組み込み、研修内容を実務の中で検証する形にしました。
さらに、現場での実践を後押しするため、上司を意図的に関与させる設計に仕立てました。部下の実践プロセスに上司が関わることで、上司自身も論理思考や問題解決の考え方を改めて理解する機会になることを期待しました。
2. 「同じ内容をやる意味があるのか」という疑問
提案には当初、懸念が相次ぎました。基本テーマが全階層で共通のため、「同じ内容を各階層で実施する意味があるのか」「受講者が飽きを感じるのではないか」といった点です。
しかし現状を紐解けば、階層ごとに異なるテーマに基づき異なるメッセージを発信していたことが、社員の研修理解や実践の阻害要因につながっていたことは明白でした。
また、論理思考や問題解決というテーマについても、短時間の研修だけで身に付くものではないため、学びと実践を繰り返していく必要があること。そのためにも、それらを共通言語化し、職場の日々の会話で自然に使われるよう実践に活かす環境を整えることが真の定着に結び付いていくことを丁寧に説明していきました。
その結果、最終的には人事および経営の了承を得るに至りました。
3. 研修と実践をつなぐ具体的な仕組み
実際のプログラムでは、全階層で共通のメッセージを伝えるため、使用するテキストやアクションプランの基本構造を統一しました。
その一方で、ケーススタディや各種ワークのレベルについては階層ごとに調整し、それぞれの立場で考えるべき課題を扱うようにしています。
また、実践の質を高めるため、「グループコーチング」と「個別コーチング」を併用しました。グループコーチングは4〜5名で集まり、各自のアクションプランや実践結果、得た教訓を共有します。
その後、メンバー同士や講師から質問やフィードバックを受けることで、思考を深める場としました。個別コーチングでは講師から受講者一人ひとりへ、論理の不整合を整理し、問題の捉え方や解決プロセスを磨き上げる支援を行いました。
最終回には必ず受講者の上司が同席しました。受講者は実践結果や学び、今後の展望を発表し、上司はコメントを寄せる。これにより、研修終了後も実践が継続される仕組みをつくりました。
4. 成果と、今後の課題
こうした取り組みを始めてから2年、若手から管理職までのあいだに論理思考や問題解決に関する共通認識が徐々に形成されてきました。
実務や日々の会話において研修で学習した言葉や手法が使われ、職務遂行上の変化も見られます。多くの社員が共通言語の下で職務が遂行されることで仕事のスピードや質といった生産性に変化が起こり、業務効率の向上につながっています。
一方で課題も残ります。思考領域の基本的枠組みは多くの社員に展開されたものの、その深さは発展途上です。受講者が取り上げるテーマを見ると、管理職クラスでも「人手不足」や「マニュアル不足」といった表層的なものにとどまるケースも見られ、本質的かつ深く物事を捉えるまでには至っていません。
また、「なぜ同じテーマで何度も学習するのか」という新しい育成思想の浸透も道半ばです。意図や背景を知ることは能力開発のスピードを格段に変わるため、今後も継続的なアクションが必要です。
I社の取り組みは研修内容の改善だけではなく、「一貫性を持った共通メッセージによる組織変革の可能性」を示す一例になりました。
リードクリエイトは組織課題に対して、実践と学びを往復しながら変化を生み出す伴走支援を続けています。本事例が、皆様の人材育成を考える際の参考になれば幸いです。
本プロジェクトで得られた成果
- 階層別研修の一貫したメッセージによる共通言語の浸透
- 研修内容と職場実践の繫がりによる業務効率の向上
今後に残された課題
- 本質的かつ深く物事を考えることの習慣化
- 新しい育成思想の浸透に向けた継続的なアクション
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