リーダーとは何か?これからの時代に求められるリーダーの役割・能力・選抜・育成を体系的に解説

2026.10.07

「これからの時代には、どのようなリーダーが求められるのか?」

経営や人事に関わる方々から、このような問いを投げかけられる機会が増えました。

  • 優秀なプレイヤーを管理職に登用したが組織を動かせない

  • 新しいリーダー要件を定めても、抽象的な言葉が並ぶだけで選抜や育成の場面では従来の基準に戻ってしまう

  • 管理職研修を何度実施しても職場での行動変容につながらない

こうした問題は、個々の制度や研修の設計だけに原因があるわけではありません。私たちが長い間、無意識に前提としてきた「リーダーとは何者か」という根本的な人間観・組織観に問題があります。

 

私たちはこれまで、暗黙のうちに「強い意思と豊富な経験を持ち、誰よりも早く正解を見つけ、進むべき方向を示す人」をリーダーと呼んできました。

しかし、日々刻々と状況が変わる現代においては、一人のリーダーが全てを把握することは困難で、「正解」は常に揺らぎます。その意味で、これまでのリーダー像は限界を迎えつつあります。

 

今必要なのは、従来のリーダー像への要素追加ではありません。「リーダーとは何か」という定義そのものをアップデートすることです。

本稿では、これまでのリーダー像を整理したうえで、これからの時代に求められるリーダーを再定義します。

本コラムの要点

リーダーとは何かを、個人の能力論だけで捉えるのではなく、「どのような組織をつくりたいのか」という組織観から問い直します。その上で、現代に求められるリーダー像、要件設計、評価、育成、選抜までを一貫した考え方で整理します。

1. リーダー像は目指す組織の姿から決まる

リーダーとは何かを考えるには、まず「組織とは何のために存在するのか」を考える必要があります。どのような人をリーダーにするかは、どのような組織をつくりたいのかという経営の意思表明でもあります。

2. 「答えを持つ強いリーダー」の限界

従来のリーダー論の背景には、「リーダーは答えを持っているべき」という前提が根強く残っています。しかし不確実な時代には、その期待がリーダーの経験への固執や、メンバーの受け身化を招く可能性があります。

3. 他者の知恵を結集する「協創型リーダー」
これからのリーダーに必要なのは、全ての答えを一人で持つことではありません。自らの意思を持ちながら他者に開かれ、組織の知恵を結集し、最後は自ら決断する強さが求められます。

4. 事業推進と組織活性を両立する

リーダーの本質的な役割は、「事業を前に進めること」と「組織を活性化すること」の両立です。そのために必要となる六つの実践力と、それらを組み合わせて発揮する具体的なリーダー行動を整理します。

5. 自社に必要なリーダー要件をつくる

リーダーとして共通する役割や実践力を土台にしながら、自社固有の専門性、経験、価値観を重ねることが重要です。事業や戦略、組織文化に照らして、自社なりのリーダー像を具体化します。

6. 育成は「教える」ではなく「変化を促す」こと

人は正しい知識を与えられるだけでは成長しません。経験、対話、フィードバック、内省を通じて自らの前提に気づき、新しい行動を試せる環境をつくることがリーダー育成の核心です。

7. 選抜は「見抜き」ではなく「見立て」で考える

過去の実績や一度の評価だけで、将来のリーダーとしての可能性を判断することには限界があります。現在地と可能性を仮説として見立て、経験を与え、変化を確かめながら再び見立てる循環が重要です。

8. ポテンシャルは「行動」と「文脈」から捉える

人の能力そのものを直接見ることはできず、観察できるのは具体的な行動です。ただし同じ行動でも意味は異なるため、行動だけで断定せず、その背景にある状況や意思まで含めて捉える必要があります。

9. リーダーシップを組織全体に広げる

リーダーシップを一部の特別な人だけに求めても、よい組織は生まれません。制度、評価、関係性、対話まで含めて組織全体を変え、自分がいなくても人々が自ら考え動く状態をつくることが、リーダーの最終的な役割です。

この記事の著者

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株式会社リードクリエイト 常務取締役 菅 桂次郎

2003年7月リードクリエイトに入社。人材マネジメント全般に関わるコンサルティング営業を経て、2014年よりアセスメントサービス全般の開発から品質マネジメントを中心に、リーダー適性を見極めるアセスメントプログラムの進化を目指して活動を展開中。

 

 

1.リーダーは組織にとってどうあるべきなのか

リーダーについて考える前に、そもそも組織とは何のために存在するのかを考える必要があります。なぜなら、「リーダーとは何者か」を問うということは、組織におけるリーダーの在り方を問うことと同義だからです。

 

組織には様々な形態がありますが、ここでは「企業」に限定しましょう。

さて企業は、利益を生み出すことなしでは存立できません。売上、利益率、生産性、資本効率といった数字と向き合う必要があります。

 

しかし、企業で働く人々は、「管理指標」だけで成り立ちません。

  • 自分は誰かに必要とされている

  • 昨日より成長している

  • 自分の仕事が社会の役に立っている

  • 信頼できる仲間と意味のある何かを成し遂げている

こうした承認・成長・貢献の実感が、人の内側にあるエネルギーを生み出します。

 

人間は、根源的には「個」の存在です。人生の重要な選択は、最後には自ら引き受けなければなりません。一方で、人は一人では生きられない社会的な存在でもあります。家族、地域、仲間、組織といった共同体をつくり、他者と支え合いながら生きてきました。

 

働き方が多様化し、地域や既存の共同体の結びつきが弱くなった現在、企業が果たす役割は、むしろ大きくなっているように思います。

企業は単なる雇用契約の場ではなく、人が挑戦し、学び、他者と関わり、自らの存在価値を確かめる共同体でもあるからです。

 

その意味で組織とは「人が人として生きる場」であるべきです。リードクリエイトが掲げる「自立協創型組織」も、この人間観を出発点としています。

 

ここでいう自立とは、自ら考え、自ら意思を持ち、自らの選択と役割に責任を持つことです。

そして協創とは、自立した個が互いの違いを持ち寄り、一人では到達できない価値をともにつくることです。

 

だからこそ、これからの時代に求められるリーダーは「人が人として生きる場」である組織の中で貢献する存在でなければなりません。つまり、どのような人をリーダーにするかは「私たちはどのような共同体でありたいのか」という経営の意思表明にほかならないのです。

要点

① リーダーの役割はそもそも組織が何を目指すかによって決まる
② 企業は利益を生む場であると同時に、人が成長し価値を感じる共同体でもある
③ その上で誰をリーダーにするかは、どんな共同体をつくるかという経営判断になる

 

2.「強い個人」を前提とするこれまでのリーダー像の限界

これまでのリーダー像は、時代の要請に応じて発展してきました。これらの理論は、現在でも多くの示唆を与えてくれます。

  問い 特徴

① 特性論

優れたリーダーは「どんな人」か 知性、自信、責任感など、リーダーの資質・特性に着目
② 行動論 優れたリーダーは「何をする」か リーダーの具体的な行動に着目
③ 状況適合論 「どんな状況で、どう振る舞う」べきか 部下の成熟度・準備度に応じてリーダーシップを変える

 

しかし実際の企業組織には、そのさらに奥に、いまだに拭いきれないリーダー像があります。それは、「リーダーは答えを持っていなければならない」という暗黙の前提です。

豊富な知識と経験を持ち、素早く判断し、明確な指示を出す。問題が起これば自ら先頭に立ち、強い意思でメンバーを牽引する……。いわば「牽引型」あるいは「キャプテン型」のリーダー像です。

 

環境が比較的安定し、過去の成功パターンが将来にも通用する状況では、このモデルは合理的でした。

 

しかし、顧客ニーズ・技術・産業構造・働く人の価値観が複雑に変化する現在においては、リーダー個人の経験や知識だけで「正解」を導き出すことは困難です。

にもかかわらず、本人も周囲も「リーダーは答えを知っているはずだ」と期待してしまうと、リーダー本人は苦しくなっていき、結果として過去の経験に固執するリーダーが生まれてしまうわけです。

 

過去の経験に固執するリーダーは、「自分より詳しい人の意見を聞けない」「判断を抱え込む」「失敗を避けるために意思決定を遅らせる」といった行動をとります。するとメンバーもまた、リーダーの正解を待つ受け身の姿勢となり、自ら考えなくなっていきます。

要点

① 従来のリーダー像は「強い個人」を暗黙の前提にしてきた
② 「リーダーは答えを知っている」という期待が今も根強く残る
③ その期待が、「リーダーの経験への固執」と「メンバーの受け身」を生み出す

3.現代に求められるリーダーとは

牽引型のリーダーシップが問題なのではありません。ここで問題なのは、「未知の状況でもリーダー個人が正解を導く」と考えてしまうことです。

 

これからのリーダーに求められる強さとは、全ての答えを持っているように振る舞う強さではありません。自分一人では分からないという現実を直視し、それでも問いから逃げず、他者の知恵を借り、最後は自らの意思で決断する強さです。

 

すなわちリーダーとは、自らの意思と責任を持ちながら、多様な個の自立を引き出し、対話と葛藤を通じて組織の知恵を結集し、メンバーと新たな価値を創造する人です。リードクリエイトはこのようなリーダーを「協創型リーダー」と呼んでいます。

 

「自立」だけを強調すれば、独善や自己責任論に陥ります。

「協調」だけを強調すれば、周囲への迎合や責任の分散が起こります。

 

「協創型リーダー」は、自らの軸を持ちながら、他者との関係性に自分をひらきます。

•    組織が直面している厳しい現実から目を背けず、必要であれば耳の痛い問いを投げかける

•    意見の違いや利害の対立を安易な妥協で収めない

•    多様な意見を尊重しながらも、最後は進むべき方向を示し、その決断の責任を引き受ける

これらは異なる意思・経験・専門性・価値観がぶつかる中で、それまで存在しなかった新しい解を生み出す営みです。これからのリーダーには、他者を受容する柔らかさと、現実に働きかける強さの双方が必要になります。

要点

① 不確実性の時代では、リーダー個人の知識や経験だけでは答えを出せない
② 他者の知恵を引き出しながら、最後は自らの意思で決断する
③ 他者を受容する柔らかさと、自ら決断する強さの両方が求められる

4.リーダーに必要な「二つの役割」と「六つの実践力」

リーダーに託されている本質的な役割は、「事業を前に進める」「組織を活性化する」の二つです。これらは決して別々の役割ではありません。

 

事業を前に進めるには、メンバー一人ひとりの力や知恵を引き出す必要があります。

一方、組織の活性化も単に職場の雰囲気をよくすることではなく、組織が共通の目的に向かい、持続的に価値を生み出せる状態をつくるためのものです。

 

人を犠牲にして事業成果だけを追い求めれば、組織はやがて疲弊します。反対に、互いの関係性を大切にするあまり、成果や責任への厳しさを失えば、それもまた健全な組織とはいえません。


事業の発展と、そこで働く人の成長を、ともに実現する。その難しい両立に向き合い続けることが、これからの時代に求められるリーダーの役割です。

そして、それぞれの役割を果たすために必要となる働きを、六つの実践力として捉えています。

リーダーの二つの役割 リーダーの六つの実践力
(1)事業推進
  • ①変革創造
    将来の発展に向けて、新しい価値を生み出す
  • ②問題解決
    現状の改善に向けて、効果的な対策を講じる
  • ③達成意欲
    自らの役割と責任を引き受け、最後まで全うする
(2)組織活性
  • ④対人影響
    メンバーが自立的に使命へ向かう意欲を引き出す
  • ⑤協働促進
    互いを認め、助け合う強い絆をつくる
  • ⑥信頼獲得
    自らの在り方を通じて、組織に規範をもたらす

 

リーダーが自らの意思を持ち、対話を通じて人の力を引き出し、異質な知を統合し、最後は自ら決断する。その一連の営みの中で、六つの実践力は相互に結びつきながら発揮され、「事業推進」と「組織活性」が両立します。

4-1. 【変革創造 × 達成意欲】自らの意思を持ち、未来を構想する

周囲を巻き込む起点は、リーダー自身の意思です。

何を目指すのか。何を守り、何を変えるのか。誰に、どのような価値を届けたいのか。困難な状況で、何を優先するのか。

 

ここでいう意思は、強い自己主張や自分の考えを押し通すことではありません。自らの価値観や目的を自覚し、組織の未来に対して責任を持つことです。

 

リーダーが未来に向けた意思を持つことで、初めて「変革創造」が始まります。

変革とは、目新しいことを始めることだけではありません。これまでの前提を問い直し、組織が将来にわたって価値を生み出すために、何を残し、何を手放し、何を新たにつくるのかを考えることです。


一方で、構想を語るだけでは事業は動きません。

変化には、必ず不確実性と抵抗が伴います。思いどおりに進まない局面でも、自らの役割から逃げず、必要な努力を続け、結果が出るところまでやり抜く。その「達成意欲」があって初めて、構想は現実の価値へと変わります。

ただし、自分の意思がなければ、対話は単なる意見収集になります。反対に、自分の意思を絶対視すれば、対話は相手を従わせる手段になります。

 

これからのリーダーに求められるのは、自らの軸を持ちながら、自分の考えも変わり得るものとして、他者との対話の場に差し出すことです。

意思を持つことと、他者にひらかれていること。その両方がリーダーの出発点になります。

4-2. 【対人影響 × 信頼獲得】本質的な問いを立て、人が動き出す場をひらく

リーダーの役割は、全ての問いに正解を示すことではありません。

むしろ、組織が本当に向き合うべき問いを提示することにあります。

  • 「私たちは、本当は何を実現したいのか」

  • 「顧客にとっての価値は何か」

  • 「この問題の奥にある、真に解くべき問題は何か」

こうした問いは、メンバーを受け身の実行者から、自ら考え、判断し、行動する当事者へと変えていきます。これがリーダーに求められる「対人影響」です。

 

対人影響とは、巧みな話術や強い説得力によって、人を意のままに動かすことではありません。相手が担っている役割や、その人の中にある意思や可能性に働きかけ、本人が自ら動こうとする力を引き出すことです。

 

そのためには、リーダー自身が信頼される存在でなければなりません。

言っていることと、実際に行っていることが一致している。都合の悪い事実から逃げない。約束を守る。間違えたときには、自らの非を認める。成果が出ないときにも、責任を他者に押しつけない――そうした日々の行動が積み重なることで、リーダーへの信頼が生まれます。

 

信頼獲得とは、誰からも好かれることではありません。人気や人当たりのよさとも異なります。たとえ耳の痛いことを伝える場面であっても、「この人は、組織と私たちの未来に誠実であろうとしている」と認識されることです。

 

リーダーの在り方は、言葉以上に周囲へ伝わります。

どのような姿勢で困難に向き合うのか。異なる意見をどう扱うのか。失敗した人にどう接するのか。そうした振る舞いが、組織における暗黙の規範をつくっていきます。

だからこそ、信頼獲得は人間関係上の能力にとどまりません。組織にどのような文化をもたらすのかという、リーダーの根源的な実践力なのです。

4-3. 【協働促進 × 変革創造】異質な知をつなぎ、新しい意味をつくる

組織には、立場によって異なる現実があります。

  • 経営と現場

  • 営業と開発

  • 短期成果と長期投資

  • 顧客価値と収益性

  • 個人の希望と組織の要請

どちらか一方を正しいと決めるだけでは、複雑な問題は解けません。しかし、全ての意見を取り入れようとすれば、結論の焦点が失われ、誰も責任を負わない折衷案に陥ることがあります。

 

リーダーに求められる「協働促進」は、単に意見をまとめるだけでなく、異なる立場にある人が、互いの事情や考え方を理解し、自分の担当領域を超えて共通の目的に向かえる関係をつくることです。

そのためには、表面に現れた意見だけでなく、その背後にある事実、問題意識、価値観、守ろうとしているものを読み解く必要があります。

 

反対意見は、協働を妨げるものとは限りません。むしろ、相手に異なる現実が見えているからこそ、意見が食い違っている可能性があります。リーダーは、対立を早く収めようとするのではなく、異論や葛藤を、まだ見えていない問題や可能性を発見するための大切な情報として扱う必要があります。

 

そして、異なる知恵を平均化するのではなく、それぞれを活かしながら、双方がまだ言語化できていない上位の目的や、新しい選択肢を見いだしていきます。

 

ここで「協働促進」と「変革創造」がつながります。変革は、一人の優れたアイデアだけから生まれるのではなく、異質な経験や専門性、価値観が出会い、既存の枠組みが揺さぶられることで、それまで存在しなかった意味や価値が生まれます。皆で同じ考えになるのではなく、違いを残したまま、違いを新たな価値へと変えていくこと——それこそが、これからのリーダーに求められる統合の力です。

4-4. 【問題解決 × 協働促進】複雑な現実を捉え、真に解くべき問題を定める

「問題解決」というと、すでに明らかになっている問題に対して効果的な対策を考えることだと思われがちです。

しかし経営や組織の現実では、「何が問題なのか」自体が明確でないことが少なくありません。

業績が上がらない、部門間の連携が進まない、若手が育たない、新しい施策が定着しない――目の前の現象に対処しても、その背後にある構造が変わらなければ、問題は別のかたちで繰り返されます。

 

リーダーに求められる問題解決は、すぐに対策を示すことだけではありません。さまざまな立場から見えている事実を集め、それらの関係性を捉え、組織が本当に解くべき問題を定めることです。

 

ここでも、協働促進が重要になります。

一つの部門や専門領域だけで捉えた問題は、現実の一部分に過ぎないかもしれません。異なる立場の人が持つ情報や問題意識を持ち寄ることで、初めて問題の全体像が見えてきます。

 

ただし、全員の意見を集めるだけでは問題解決にはなりません。

  • 集められた情報の中から何が本質で何が枝葉なのかを見極める

  • 原因と結果を整理し、限られた時間と資源の中でどこに働きかけるべきかを決める

  • 実行可能な対策へと具体化する

リーダーとは一人で答えを出す人ではなく、組織の知恵を集め、解くべき問題と進むべき方向を明らかにする人なのです。

4-5. 【達成意欲 × 信頼獲得 × 問題解決】葛藤の中で決断し結果を引き受ける

対話を重ね、さまざまな意見を聞いたとしても、全員が納得する答えが得られるとは限りません。

時間や資源には制約があり、複数の価値が両立しないこともあります。顧客への責任と社員への責任、現在の利益と将来への投資、事業の合理性と関係者の思い――そうした葛藤の中で、最後には何かを選び、何かを諦めなければなりません。

 

リーダーは、合意形成を責任回避の手段にするのではなく、多様な意見を尽くして聞き、必要な事実を確かめ、複数の選択肢を検討する。その上で、自ら決断します。

 

ここで発揮されるのが、「問題解決」「達成意欲」「信頼獲得」です。

 

問題解決によって、感情や一時的な空気に流されることなく、解くべき問題と選択肢を見定める。達成意欲によって、困難な決断から逃げず、決めたことを実行に移し、成果に至るまで責任を持つ。そして信頼獲得によって、なぜその選択をしたのか、誰にどのような負担を求めるのか、何を今後も大切にするのかを誠実に説明する。

 

決断した以上、全てが思いどおりに進むとは限りません。結果を見ながら、必要であれば自らの判断を修正することも、責任の一部です。

 

「一度決めたことを変えないのが強いリーダー」なのではなく、変化した現実を直視し、自らの誤りや限界も引き受けながら、より望ましい方向へと組織を導き直せる人こそ、これからの時代に求められるリーダーといえるでしょう。

要点

① リーダーの本質的役割は、事業推進と組織活性を両立させること
② 六つの実践力を組み合わせ、人と組織の力を成果へとつなげる
③ 対話と葛藤を経て自ら決断し、その結果まで責任を引き受ける

5. リーダー要件のつくり方:共通基盤+組織戦略

企業ごとに事業形態・理念・組織文化が異なるため、求められるリーダー要件には違いがあります。

  • 事業を遂行するために必要な専門知識や専門技能

  • 商品・サービス・顧客・業界に関する深い理解

  • 企業理念や歴史を背景とした固有の価値観

  • 担う役割や組織階層に応じて求められる経験や知見

こうした要件は、それぞれの企業の事業特性や戦略、組織文化によって異なりますが、リーダーの本質は変わりません。あくまでもリーダーとしての役割と実践力を共通の基盤とし、その上に、各社固有の専門性や知識、経験、価値観を重ねる必要があります。

 

したがって、リーダー要件を策定する際に、企業がまず考えるべきことは、「自社においてリーダーとしての共通の役割と実践力を、どのような場面で、どのように発揮することが求められるのか」「その発揮を支えるために、どのような固有の専門性や経験が必要なのか」について、自社の事業や戦略、組織の現実に照らして具体化することです。

 

そのためには、 

  • 「私たちの組織は、何のために存在するのか」

  • 「未来に向けて、誰にどのような価値を届けたいのか」

  • 「その実現のために、リーダーは何を構想し、何を決断し、どのように人と組織に働きかけるのか」

  • 「リーダーとしての実践力に加えて、自社ではどのような専門性や経験が必要なのか」

こうした問いを、経営と人事、現場が自らの言葉で議論する必要があります。

要点

① まず、リーダーに共通して求める役割と実践力を定める
② 次に、自社ならではの知識・経験・価値観を要件として加える
③ 経営・人事・現場で議論し、自社の言葉でリーダー像を定義する

6.リーダー育成の方法:内省の機会を設計するのがコツ

次にリーダー育成の方法について深めていきましょう。「育成」という言葉から、つい私たちは知識やスキルを教えることを想像しがちですが、そもそも人は正しい知識を得ただけでは成長しません。

 

これまで通用していた自分の考え方や行動が通用しない。良かれと思って行ったことが、相手に望ましくない影響を与えていた。自分一人の力では解けない問題に直面する――こうした悩みや葛藤が生まれたとき、人は初めて自らの前提を見つめ直し、成長のきっかけを掴みます。

 

すなわち成長とは、外から正解を与えられることではなく、自分が無意識に選んできたものに気づき、別の選択の可能性を獲得することなのです。

 

そのため、リーダー育成において重要なのは、経営層や人事が、本人を一方的に変えようとすることではなく、あくまでも本人が自分自身を見つめ、自ら変わる理由を見つけられるよう、経験・対話・フィードバック・内省の機会を設計することです。

 

ただし、成長の主体が本人にあるからといって、全てを本人の自己責任にしてよいわけではありません。人は関係性の中で成長します。挑戦を任せてくれる上司、率直にフィードバックしてくれる仲間、失敗を学びに変える対話、次の機会を与える組織があってこそ、新しい行動を試すことができます。

 

つまりリーダー育成とは、リーダーの内面への働きかけと、そのリーダーを取り巻く環境への働きかけを同時に行うことなのです。

要点

① 人は知識を得るだけでなく、自らの前提が揺らぐ経験から成長する
② 育成では、経験・対話・フィードバック・内省の機会を設計する
③ 本人への働きかけと、成長を支える周囲の環境づくりを両立する

 

7.リーダーを選抜する方法:「見抜き」ではなく「見立て」が大切な理由

リーダー選抜では多くの場合、過去の実績が重視されます。しかしここに落とし穴があります。もちろん、プレイヤーとしての成果は重要です。しかし、過去の実績と次の役割で期待される成果は、決して同じではありません。

  • 「自ら成果を出す力」と「他者を通じて成果を生み出す力」

  • 「既存の方針を確実に実行する力」と「未来に向けて新しい方向を構想する力」

  • 「専門的な問題を解く力」と「利害関係者を巻き込み問題そのものを定める力」

これらはそれぞれ異なります。だからこそ、過去の実績だけで未来のリーダーを選ぶことには限界があります。

 

一方で、「リーダー適性がある/ない」を一度の評価で判定することにも慎重であるべきです。人の行動は状況との相互作用によって生まれます。置かれた役割、周囲との関係、本人が感じている期待や脅威によって、現れ方は変わります。

 

リーダー選抜で必要なのは、人を一つの尺度で見抜くのではなく、観察された行動、現在の能力特性、内面的な志向性、これまでの経験、置かれている環境、今後与え得る機会などを総合し、どのような状況で、どのような可能性がひらく人なのかを見立てることです。

 

見抜きが「正体を当てる」発想だとすれば、見立ては「現在地と可能性を仮説として捉える」発想です。

 

むろん見立てには、必ず不確実性が残りますので、一度の評価で人を固定せず、適切な経験を付与し、変化を確かめ、再び見立てる循環が必要です。

 

見立てる。育てる。確かめる。そして、もう一度見立てる。

この循環によって初めて、アセスメントは選別の道具ではなく、人と組織の可能性をひらく経営の営みになります。

要点

① プレイヤーとしての成果と、リーダーとしての成果は同じではない
② 選抜では、人を固定的に判定せず、可能性を仮説として捉える
③ 見立て・育成・再評価を繰り返す循環が重要になる

8.リーダーのポテンシャルを「行動」と「文脈」から判断するべき理由

ではリーダーの可能性を、どのように見いだせばよいのでしょうか。

人の能力は、直接目で見ることができません。私たちが観察できるのは、ある状況に置かれた人が、何を捉え、何を選び、どのように行動し、どのような結果をもたらしたかです。

 

行動は重要です。しかし、一つの行動だけを切り取って、人の能力や特性を断定することは危険です。例えば「発言しなかった」という行動において、考えがない場合もあれば、他者の意見を理解しようとしている場合も考えられます。「強く主張した」という行動でも、目的への責任感から生じている場合と、自分の立場を守ろうとしている場合があります。

 

行動の背後には、状況認識、価値判断、他者理解、感情、経験、意思、無自覚な選択傾向があります。そして行動の意味は、それが置かれた文脈によって変わります。

 

リードクリエイトは、シミュレーションプログラム「アセスメントセンター」という方法で、特定の状況下における具体的な行動を観察・記録・分類・評価します。リーダーが直面する葛藤状況を疑似体験し、自らの思考や行動を振り返ることによって、内省と自己理解を促すことができます。

 

アセスメントセンターは、しばしば人材の評価にも使われますが、単なる査定にとどめるのではなく、その人がどのように世界を捉え、何を守ろうとし、どのような可能性を持っているのかを、複数の視点から丁寧に考察することが肝要です。

要点

① 人の能力は直接見えず、状況の中で表れる行動から捉える
② 同じ行動でも意味は異なり、背景や文脈まで見る必要がある
③ 複数の視点で行動を捉え、その人の可能性を丁寧に見極める

9.リーダーは「特別な人」ではなく「組織から生まれる存在」

ここまでリーダーの定義・育成・選抜について述べてきましたが、最後に一つ、重要な点があります。それは、リーダーを「一部の特別な人」と決めつけてはならないということです。リーダーとなる可能性は、組織で働くあらゆる人々にひらかれています。

 

そして、どのようなリーダーが生まれて育っていくのかは、組織文化に大きく左右されます。

 

例えばトップが「主体的に考えよ」と語りながら、現場の異論を認めない。人事制度では協働を掲げながら、実際には個人の短期成果だけを評価する。挑戦を奨励しながら、失敗した人を減点する――このような組織では、どれだけ優れたリーダー研修を実施しても、よいリーダーは生まれません。

 

人は、掲げられた言葉よりも、実際に誰が評価され、誰が昇進し、どのような行動が報われているかを見ています。どのようなリーダーを選ぶかは、どのような組織文化を選ぶかということと同義です。そしてリーダーを育てるということは、リーダー個人に能力開発を求めるだけでなく、協働が起こる制度、関係性、対話、経験を組織全体でつくることです。

 

リーダーの最終的な役割は、自分がいなくても、人々が自ら考え、互いに働きかけ、新しい価値を生み出し続ける組織をつくること。

リーダーが全て動かすのではなく、リーダーの介在によって、人と人との間に変化の連鎖が生まれる。その連鎖がやがて自律的な循環となり、組織を持続的に発展させていく。

そこに、これからのリーダーシップの本質があります。

要点

① リーダーシップは、一部の特別な人だけに求めるものではない
② 誰を評価し登用するかが、組織文化そのものを形づくっていく
③ 優れたリーダーは、自分がいなくても動く組織をつくる

おわりに

リーダーとは、生まれ持った特別なカリスマではありません。

自らの意思を持ち、他者の可能性に働きかけ、異なる知恵をつなぎ、葛藤の中で決断し、事業と組織の双方に責任を持つ存在です。

 

その現れ方は、一人ひとり異なります。明確な方向を示すことで人を動かす人もいれば、鋭い問いによって周囲の思考を促す人もいます。人と人とをつなぐことに長けた人もいれば、複雑な現実を整理し、進むべき道を明らかにすることに強みを持つ人もいます。

 

人の可能性は、過去の実績だけでは決まりません。そして、人の成長は、研修だけでは生まれません。

 

現在の能力や特性を丁寧に見立てること。本人が自分自身を見つめる機会をつくること。新しい役割と経験を託すこと。変化を確かめ、再び対話すること。

その一つひとつに人が介在し、関係性をつくることで、リーダーとしての可能性はひらかれていきます。

 

リードクリエイトは、アセスメントと対話を通じて、組織のリーダーに共通して求められる役割と実践力を明らかにするとともに、一人ひとりが持つ異なる可能性を見立て、育て、確かめていく営みに伴走していきます。

☑ 考えを整理したい方へ

 

 

 

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