【事例】過去を脱ぎ捨て、新しい未来の組織へ。「全社共通の人材像」を起点に再設計した人材戦略

2026.08.21

【事例】過去を脱ぎ捨て、新しい未来の組織へ。「全社共通の人材像」を起点に再設計した人材戦略

1. 出発点は「求める人材像」の言語化

リードクリエイトが最初に人事の皆様と議論したのは、「どこから手を付けるべきか」という点でした。

議論すべきテーマは、採用、育成、評価、報酬など多岐にわたりましたが、リードクリエイトはまず「求める人材像の策定」を起点に据えることをご提案しました。

 

経営が目指す方向性と、社員に期待している行動や姿勢に一貫性がなければ、人材施策はその場しのぎになってしまいます。

そこで、経営環境の変化と事業戦略を時間軸で整理し、「これまで会社がどのような環境で、どのような判断をしてきたのか」「これから何を目指していくのか」を明確に示した上で、人材戦略を社員一人ひとりが自分事として捉え直せるようにすることを重視しました。

 

検討の過程では、「求める人材像を全社共通で定めるのか、事業別に定めるのか」という点が大きな議題となりました。

B社ではこれまで各事業部に合わせた運用を進めてきましたが、それによる弊害も各所で浮き彫りになっていました。

最終的には、今後会社として変革を進めていくという経営メッセージを明確に打ち出すため、「全社共通の人材像」として定める判断に至りました。

2. 「人材要件」と「育成体系」をどうつなぐか

次に取り組んだのが、「人材要件の設計」です。求める人材像を掲げるだけでは、現場での行動や育成にはつながりません。

そのためには、人材像を性格、知識、技術、専門能力、汎用能力といった要素に分解し、それぞれの関係性を整理することが不可欠です。そうすることで、人材要件を構造的に理解できる形にしました。

 

併せて、各等級定義から主要な成果や役割を抽出し、人事部門が主に管轄できる「汎用能力(思考・対人・姿勢)」に焦点を当て、等級ごとに「汎用能力を発揮した具体的な行動」を定義しました。これにより、日々の業務や育成の中で「人材要件」を成長指標として意識できる形になり、社員への浸透も図れるようになったことも成果の一つです。

 

なお、当初は評価制度や報酬制度との連動も視野に入れていましたが、現行制度は人材投資を抑制してきた時代背景のもとで設計されており、連動させるには抜本的な見直しが必要になります。ただし、それを行うには相応の時間を要することになるため、今回は、等級制度と育成体系との連動を優先し、評価・報酬制度との直接的な連動は見送ることにしました。

設計時に重視したポイント

  • 人材要件の要素分解と構造化
  • 等級ごとの具体的な実践行動の定義
  • スピード重視に向けた優先事項の明確化

3. 制約の中で実効性を高める工夫

評価制度との連動が難しい以上、「運用でどう補うか」が重要なポイントになります。

人材育成体系では、等級制度のポリシーに基づき、昇進昇格の考え方と各階層に期待する成果・成長を一致させました。

また、一般職から管理職など、非連続な成果や成長が期待される階層については、上位等級の仕事ができると判断されたら昇進昇格させる「入学方式」の審査を採用しました。

さらに、人事部門が主管する全社共通の教育体系を目的別に整理し、以下の観点で分類しました。

  1. 新たな役割認識に向けては「昇進昇格時研修」
  2. 次階層への準備に向けては「アセスメント」
  3. 非連続の成長に向けては「選抜教育」
  4. 各人の探求テーマに向けては「公募型研修」

それぞれの施策を汎用能力と紐付けることで、育成の意図が伝わりやすい設計としています。

汎用能力の開発が求められる階層については、上長に対して汎用能力シートをMBOの参考指標として配布し、職場での育成指導を促す形で運用しました。

4. 成果と次に向けた課題

本プロジェクトを通じて、経営と人事の間で一貫性のある設計ができ、社員に発信するメッセージの論理性は大きく高まりました。

経営環境の変化と会社の歩みを整理した年表も併せて活用することで、人材戦略の意味付けがなされ、社員の理解度や納得感の醸成につながっています。

 

一方で、評価・報酬制度と連動していないことから、「結局、評価されるのは実績や専門性」という認識を完全に払拭するには至りませんでした。研修での発信やMBOへの参考指標としての活用を推奨しましたが、現場浸透には限界があることも明確になりました。

 

今後は、メッセージ性の担保に加え、評価制度・報酬制度との連動をどう実現するかが重要なテーマです。また、高い専門性が求められる事業特性を踏まえ、「B社が求める専門性の高い人材」をどのように定義するかも、次の論点として挙がっています。

 

リードクリエイトは、こうした制約や葛藤も含めてクライアントと共有しながら、段階的に人材戦略を前進させていく伴走を続けています。本事例が、皆様ご自身の人事課題を考える際の参考になれば幸いです。

設計時に重視したポイント

  • 経営と人事のメッセージの一貫性の確保
  • 人材戦略の背景・意味付けの明確化
  • 社員の理解度・納得感の向上

今後に残された課題

  • 評価制度・報酬制度の連動
  • 「実績・専門性偏重」からの意識転換
  • 「求める専門性の高い人材」の再定義

 


 

 

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