1. 経営幹部の人材要件策定と活用範囲
候補者人材の知識や経験、能力などにバラつきがある。育成の質や基準も統一されていない。このままでは意図する成果が確実に得ることは難しい――これらの課題と向き合うのが本件の出発点です。
後継者の選抜と育成にあたっては、「経営幹部の人材要件の明確化」が起点となるため、その策定から着手しました。その際二つのポイントを押さえながら進めていきました。
【ポイント1】人事部門だけで作成せず他部門も巻き込む
人事部門だけで作成すると「人事がつくった基準」と受け止められる傾向が高く、経営層の納得や現場での活用が進まない事例が多く見られます。
そのため、作成プロセスには各部門の代表者を巻き込み、そこで決められた方向性については人事担当役員へ適宜内容を報告し、経営陣への共有を依頼することにしました。
【ポイント2】人材要件の活用範囲を広げる
単に人材要件を定義するだけでは単なる言葉の羅列に留まります。
今回のプロジェクトは候補者の選抜と育成を視野に入れているため、「どのような観点に基づき、できている/できていないを判断するのか」という着眼点を整理しました。それにより、評価や育成会議といった実務での活用を促しました。
2. 組織状況を踏まえた柔軟なコンサルティング
当初のコンサルティングプロセスは、各部門の執行役員や事業部長に対する個別インタビューやワークショップを実施し、そこから要件を抽出する方式を想定していました。
しかし実際には関係者の多忙なスケジュールの中で時間を確保することが難しく、この方法は現実的ではないと状況が見えたため、各種会議の議事録や既存資料をもとに要件を抽出する方法へと舵を切りました。
実際の作業は、複数資料の横断的な分析から始まります。
「各種会議の議事録」「既存のサクセッションプラン」「同階層採用時の要件定義」「執行役員向け360度評価項目」「中期経営計画および10年後ビジョン」「過去の育成計画に関する議論内容」など、多岐にわたる資料群から情報を整理し、経営幹部に求められる要素を抽出し人材要件の叩き台を作成しました。
その後、人事部門と数十回の議論を重ねながら、言語の精度と社内での納得度を高めていきました。
また、上述したように完成した要件を単なる定義として終わらせるのではなく実際の活用を想定し、「要件ごとの評価着眼点」「候補者の成長課題を抽出するための観点」「議論を構造化するための運用フォーマット」なども設計しました。
例えば「自組織のビジョンを構想する力」を評価する際には、印象論にならないよう「ビジョンの時間軸」「具体性」「社員および社外にとっての魅力度」「全社ビジョンとの整合性」という4つの観点を設定し、「できている/できていないを判断する基準」を明確にしました。くわえて、整理した要件の社員への開示領域と活用範囲についても本コンサルティング内で整理し、現場での実効性を後押ししました。
コンサルティング内容
- 現存の各種資料をベースに叩き案の作成
- 数十回にわたる人事部門との議論による言語化のブラッシュアップ
- 実際の育成場面での活用を想定した資料の整理
3. 現在地と今後の課題
現在H社では、各部門の執行役員および事業部長が参加する人材育成会議において、本プロジェクトで整理した人材要件を基準に議論が行われています。
その結果、経営幹部候補者の評価はこれまでのような断片的かつ個別の印象ではなく、構造的な観点に基づいて行われるようになりました。その上で、各候補者の育成課題の設定とアクションの具体化も進んでいます。
また、本プロジェクトを通じて人事部門には人材要件の設計ノウハウが蓄積されました。そのため現在では、部長層や課長層といったレイヤーの人材要件整理も内製で進めています。
一方で、事業環境は常に変化しています。これまでの最適がこれからの最適とは限らないため、定期的なメンテナンスは不可欠です。その体制づくりも併せて進めています。
H社の取り組みは、経営幹部の人材要件の設計を基点に選抜や育成の精度を高めていくことになると同時に、社内にノウハウを蓄積していくことにもつながりました。
リードクリエイトはこうした組織事情や制約も踏まえた上で、自走を支援する取り組みも行っています。
本事例が、人材要件策定を出発点とした仕組みづくりを検討されている貴社の参考になれば幸いです。
本プロジェクトで得られた成果
- 経営幹部候補者の選抜と育成の標準化
- 人材要件策定のノウハウの社内蓄積
今後に残された課題
- 環境変化に応じた定期的なメンテナンスと改善
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