人材評価の基本的考え方と押さえるべき4つのポイント

2022.10.04

コラム|人材評価の基本的考え方と押さえるべき4つのポイント

人材価値を評価する

人を評価する行為は、社会やビジネスの中では様々な場面で行われます。大前提は、「人間としての評価」ではなく「人材としての評価」であり、評価の高低は、ある対象への貢献度や希少度、提供価値の大きさによって測られます。特に組織における評価では、組織発展への貢献度としての人材価値が測られることになります。

組織とは明確な目的のもとに発足し、目的の実現に向けて諸活動を行っていきます。したがって、人材の価値は、組織の諸活動を進めていくうえで必要な資源をどれだけ提供できるかによって決まると言い換えることができます。そして、人材が提供する資源とは、知識やスキルを含めた能力であり、人材価値は「保有する能力×目的との適合度×発揮度合い」の総量によって規定されます。

目的との適合度とは、組織の諸活動において求められるパフォーマンスの発揮に合致しているかどうかです。組織において必要性が低い能力をいくら豊富に備えていても、人材の価値は高まりません。
また、発揮度合いとは、保有する能力をどの程度組織の諸活動において発揮するかです。組織が求める能力をいくら保有していたとしても、必要な場面で発揮しないことにはやはり人材の価値は高まりません。

組織における人材マネジメントとは、まさにこれらの諸条件を満たすことで、人材価値の総和を高めていく活動と言えます。

評価が持つ2つの意味

人材評価における「評価」には2つの側面があります。一つが「人材の価値を判断して決めること」であり、もう一つは「人材の意義・価値を認めること」です。

管理職として相応しい人材を決めるにあたっては、前者の意味合いにおける評価に焦点を当てることが必要です。対して、人事考課はどちらかと言うと後者の意味合いで行う評価です。「これまでの営業成果を高く評価する」というように、過去から現在までの功績を認めるというのが後者です。

同じ評価という言葉でも、人材評価においては2つの側面があることを押さえたうえで、それぞれの意味合いを明確に切り離して捉えることが重要です。
人材評価の基本的考え方と押さえるべき4つのポイント

客観的評価と主観的評価

評価には、客観的評価と主観的評価という考え方があります。客観が「優」で主観が「劣」というニュアンスで論じられることが多いですが、どちらが正しいかというものではなく、それぞれの違いを理解したうえで、測る対象や活用目的に応じて適切に使い分けることが重要です。

また、組織で行う評価の大部分は、上司が部下のパフォーマンスを評価するという類の、「人が人を評価する」というものであるため、どのような手段を用いたとしても基本的には主観的な評価であると言えます。特に人材の価値に関わる能力などの指標は、そのものを直視することができないため、日頃の行動や成果から判断していく必要があり、この判断そのものに評価者の主観が介在します。

主観的評価が「劣」であると言われる原因は、上記の判断に大きな偏りがあること、恣意的な判断が含まれることなどによる不公平感や、評価の目的との乖離による妥当性の欠如に繋がるためです。

そのため、組織における重要な意思決定を行う際の評価には、「主観的な評価に可能な限り客観性を担保すること」が納得性や妥当性の観点で重要であるということです。

特に、管理職への昇進昇格判断などにおける重要な意思決定の評価では、納得性や妥当性の担保のために客観的評価を重視することが多く、以下の条件を満たす必要があります。

評価の客観性を高める4つの条件

  • 第三者が観察可能な事実に基づく評価であること(客観的な事実)
  • 被評価者の判断から独立した評価であること(客観的な指標)
  • 第三者が評価すること(客観的な立場)
  • 評価結果の検証を行うこと(主観の集合体としての客観的な判断)

1つ目の「観察可能な事実」とは、評価者の感覚に基づく評価ではなく、誰から見ても明らかな客観的事実をもとに評価することです。

2つ目の「被評価者の判断から独立した評価」とは、被評価者の願望や判断が介入する余地を排除して評価することです。例えば、多くの性格診断ツールは、被評価者自身が回答した内容に基づく診断であるため、どうしても被評価者の「よく見せたい」「良い評価を得たい」という願望などを排除しきれません。そのような被評価者の願望や判断から独立した評価を行うことが、客観的であるためには必要不可欠です。

3つ目の「第三者が評価する」とは、被評価者本人や被評価者の利害関係者、あるいは評価に当たって先入観が介在する可能性がある者が評価するのではなく、利害関係や先入観がない第三者が評価することが必要だということです。

4つ目の「評価結果の検証」とは、判断の妥当性を評価者一人だけではなく、複数の眼で確認するということです。

以上、4つの条件がそろって初めて、その評価は「客観性が高い」と言えます。

押さえるべき4つのポイント

ここまで論じてきたように、組織の発展に向けた重要な意思決定に用いる人材評価で押さえるべきは、「客観性の高い人材価値の測定」であり、以下の4つの観点を押さえたうえで運用することが重要です。

1.目的(何のために)

起点は、評価結果を何に活用するかという視点です。当然と言えば当然ですが、意外に見落としがちな視点でもあります。特定ポジションやジョブへの適性判断なのか、報酬を決めるためのものなのか、本人の成長に向けた自己理解を促進するためのものなのか。何のための評価であるかを明瞭に定めることが重要であり、複数の目的であれば優先順位を明確にしておくことが肝要です。

2.評価領域(何を)

何を測るかという視点です。人材が提供できる資源は様々であり、その要素によって方法論は異なるはずです。ある特定領域の専門知識なのか、特定業務を遂行するためのスキルやテクニックなのか、コミュニケーションやリーダーシップのような汎用的な対人能力なのか。上記1で定めた目的を達成するために判別すべき評価要素が何なのかを特定することが重要であり、ここにズレが生じると、評価そのものの妥当性が担保できなくなってしまいます。

3.評価者(誰が)

評価の責任主体を誰が持つかという視点です。各現場の業務スキルや社員一人ひとりの勤務態度を評価するためには、人事部門ではなく直属の上司の方が適任であるように、上記1~2で定めた目的と評価領域によって、組織内外の誰が評価すべきかが変化します。一方で、評価者が増えればそれだけ評価者間のブレが生じる可能性が高まるため、ブレを最小化するための育成やツールの整備といった対策もセットで検討しておく必要はあります。

4.方法論(どのように)

どのようなツールや手段で測定するかという視点です。評価する領域や評価者によって選択肢が分かれます。自社の特定業務における専門知識を測りたいのであれば、筆記形式のテストや実務に即したインタビューなどが適切である一方で、一般販売されている知識テストでは測ることができません。スキル、能力、実績、職場行動、経験など、それぞれの評価したい領域を測定するための適切な手段を選択することが肝要です。

これらの4つのポイントが明確で一貫性があり、かつ運用にあたっては実施プロセスに透明性が伴っていることが重要です。「誰が、何のために、どのような目的で評価しているのかわからない」という状況を作ってしまうと無用な不信感を抱かせることに繋がります。人材の価値を評価することの意味と影響の大きさを理解したうえで、全体を設計する必要があります。

 

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この記事の著者

株式会社リードクリエイト
チーフコンサルタント
國廣 幸彦

2008年1月よりリードクリエイトに参画。主にコンサルティング営業を担当。年間100社以上の人材開発、組織開発に携わる。2020年からコンサルタントとして、アセスメントプログラム、研修、コンサルティングを通じて、年間1000名以上の能力開発やキャリア支援に携わる。

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