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360度評価とは ー目的に合った選び方ー|コラム|株式会社リードクリエイト

作成者: LEAD CREATE|2022.10.16

360度評価とは何か

360度評価とは、フィールドアセスメント(職場行動評価)の一手法で、上司、同僚、部下、他部署の関係者など、周囲から対象者の日常行動に対する評価を得るものです。

アンケート形式で実施することが一般的ですが、経営層などを対象者とする場合には、関係者へのインタビューによって評価を集めることもあります。

360度評価は、1990年代半ばに欧米から日本に伝わりました。欧米では360度フィードバックと呼ばれ、対象者へのコーチングやフィードバックを行う際のエビデンス収集手段として、つまり「人材育成」のために活用されていました。日本では、「評価」の側面がクローズアップされ、対象者の能力やコンピテンシーを人事考課のように測り、査定や処遇に活かせるツールとして広まりました。背景には、年功序列制度や職能資格制度における情意評価に対する不満を解消することへの期待があったと思われます。

しかし、「評価」を前面に出して当時導入に踏み切った企業の多くが、「うちの会社には合わない」という反発の声とともに数年で廃止することになりました。現在のようにネットでの回答環境も十分に整備されていなかったため、匿名性を担保することも難しかったことは容易に想像でき、上意下達が染みついた組織において、部下が上司を評価することへのアレルギー反応は人事部門が想像していた以上に大きかったことが原因として考えられます。

そんな360度評価が再び脚光を浴びるようになったのは、タレントマネジメントという考え方に始まる、「人材の見える化」の一大トレンドです。近年では株式市場における人的資本経営の導入や、コロナ禍が生み出した急激なリモートワーク環境による社員の活動が見えにくくなったことも、背中を押す要因になっています。

360度評価が評価するもの

冒頭で、360度評価は「対象者の日常行動に対する評価」と記述しました。つまり、対象者は普段こんな行動をしている(あるいはしていない)、対象者の普段の行動にはこんな特徴があるという情報を収集するものです。

ここで間違ってはいけないのは、360度評価は、あくまで表面に見える行動を評価する手法であり、対象者が保有する価値観や適性、知識や能力といった行動の前提部分を測定する手段ではないということです。ある特定領域の適性や能力などを評価したい場合は、それに適した評価手法を選ぶ必要があります。

また、360度評価は、評価をする関係者たちの主観を集積するものだということも忘れてはいけません。「関係者たちは対象者の行動をこう見ている、こう感じている」という情報であり、統一の物差しで測定された客観的なデータを提供してくれる手法ではありません。

このことは、評価結果を他者や他社と比べることに適していないということにも繋がります。対象者の結果一覧で順位や優劣をつけたり、他社平均と比較して自社の強みや改善点を探したりすることが、得意な手法ではないということを知っておくことが重要です。

360度評価を人材育成に活用する

前述の通り、その特徴から360度評価は人材育成のツールとして活用するのが王道です。健康診断や人間ドッグのように、自身の職場におけるパフォーマンスを周囲に評価してもらい、強みとなる行動や改善すべき行動について自己理解するために使います。周囲から見える自身の実態を把握することが行動改善やその先にある自己成長に向けた第一歩となるのです。

このように、360度評価のメインとなる対象は、課長や部長といった部下を持つ管理職であり、彼らのマネジメントやリーダーシップ行動です。

このように、360度評価を育成に使用する場合、最も重要なことは自己理解を促し、行動改善に繋げるサポートです。残念なことに、360度評価を実施し、その結果をレポートとして受け取るだけでは効果は限定的です。

レポートを受け取っても、ただ結果を見るだけで終わってしまったり、犯人捜しをしてしまったりと、期待していた自己理解や行動改善の意識に繋がらないことがほとんどです。そうならないために次のようなサポートが必要になるのです。


1つ目は、座学によるインプットです。研修形式でも構いませんが、動画教材でも十分だと考えます。2つ目は、ワークショップや上司との1on1、プロによるコーチングなどです。当然個別対応の方が効果は高いことは理解しつつも、社内のリソースが限られる場合や上司による1on1ではスキルやノウハウ面で不安があるという問題意識を持つクライアントも多く、プロによるコーチングまでをセットで導入されるケースが増えています。

 

360度評価を選ぶ観点

現在、非常に多くの360度評価ツールが提供されています。その中から自社にあったツールを選ぶ観点を紹介します(価格を除く)。

 

リッカート法とプロブスト法

最後に、最近よく相談をいただく「リッカート法が良いのか、プルブスト法が良いのか」についての考察です。

リッカート法とは、「非常に良い、良い、普通、悪い、非常に悪い」のように、評価を行う尺度を設定し、設問毎に評価を行い集計する手法です。360度評価においてはメジャーと言えます。

プロブスト法は、多くの選択肢の中から該当するものを選択する手法です。例えば「対象者の強み(改善点)と思う項目を3つ選んでください。」というようなものです。この形式の360度評価が登場したのはここ5~10年ほどで、パルスサーベイの普及に伴って増えてきました。(パルスサーベイとは、脈拍-Pulseのように、簡易的な調査を短期間に繰り返すことで、社員や現場の状況をタイムリーに確認したり、その定期的な変化を把握したりする手法)

リッカート法のメリットは、網羅的な評価ができることと強度(あるいは頻度)の把握ができることであり、それによって自己理解が進めやすいことです。デメリットは回答者の負担(例えば設問が50個あると、その回答時間は10分程度)があるということと回答者による評価の甘辛が発生しやすい(主観の評価)ことです。甘辛については、発生することを前提に、結果の読み解き方や受け止め方を理解していただくことで解消が可能です。

プロブスト法のメリットは、回答の簡易性と特徴の掴みやすさです。回答の簡易性で言えば選択肢さえ大体知っていれば、1名分の回答について3分程度で済みます。特徴の掴みやすさという点では、リッカート法が点数を集計するのに対し、プルブスト法は票数を集計します。結果特徴的なものは分かりやすく表出します。一方のデメリットは、網羅性が低いことと選択の理由(理由となる具体的な行動)が見えにくいことです。これは自己理解や行動改善へのつなぎを阻害します。これはフリーコメントで補完したり、パルスサーベイとして実施したりすることで軽減することができます。

このように、リッカート法にもプロブスト法にも、それぞれメリットデメリットがあるとともに、デメリットについては、それを解消したり軽減したりするための方法があります。したがって、導入目的に合わせて、主にメリットを捉えて検討するのが良いと言えます。

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