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AI時代のビジネスパーソン「失われつつある思考力」と「伸ばしていくべき能力」とは|コラム|株式会社リードクリエイト

作成者: LEAD CREATE|2025.03.05

生成AIの本格的な社会実装が為される中、人間の「考える力」が急速に劣化しているのではないかという漠然とした問題意識を持っている方は多いのではないでしょうか。今後の社会の方向性として、AIを代表するテクノロジーとの共存は、避けては通れないという前提に立った時、私たち人間は、何に価値を見出し、どのような活動に注力していくべきなのでしょうか。

本コラムでは、ビジネスパーソンやリーダーに求められる「思考する力」に焦点を当て、これからの人材育成について考察してみたいと思います。

「思考しなくても良い社会」の到来

皆さんは、1953年に出版された「華氏451度」というSF小説(1966年に映画化)をご存じでしょうか。情報の全てがテレビやラジオによる画像や音声などの極端に一般化・単純化された感覚的なものばかりの社会において、本の所持や読書が禁じられた架空社会における人間模様が描かれた作品です。小説の中の世界では、「思考する」という害悪の根源である「本」の全ては、昇火士(消防士の逆)によって燃やされてしまいます。表面上は穏やかな社会として描かれている背景に、人間の思考力と記憶力が失われ、自分で何も考えなくなった世界の末路がどうなるかというメッセージが込められた内容です。

子どもの頃に観た映画の記憶を頼りに、35年ぶりに改めて小説を読む機会を得ました。当時から社会は大きく変化し、圧倒的な情報化社会になった現在において、華氏451度の世界が近づいていることへの恐怖と危機感を抱いています。極端に単純化されたショートムービー、自分の嗜好に偏った動画コンテンツ、居心地の良いコミュニティ内での簡素化されたメッセージ、これらの閲覧に一日の大半を過ごす日常。その結果、本を読んだり、文字を書いたりする思考時間は極端に削られ、自分で考えるよりも「検索する」「生成AIに聞く」ことで当面の回答を得るための最短距離を模索する。電車の中でもお風呂の中でも、ほとんどの時間をスマホ画面と共に過ごす日々。多少のディティールの違いこそあれ、まさに華氏451度の世界になってしまっているのです。

たしかに世の中は圧倒的に便利になっているのだと思います。洗濯もボタン一つで終了するため、外に干すかどうかの判断や時間も考えなくても問題ありません。極端に単純化された「ボタン」の押し方さえ理解すれば、洗濯もお風呂も調理も買い物も、思考作業から解放されたということです。同じようなことが、ビジネスの至る所にも増えてきており、何も考えなくても業務ができてしまう「異常なほどに便利な世界」に近づいているのが今なのだと思います。

決して、AIなどのテクノロジーを頭ごなしに否定する意図はありませんが、「手放してはならないモノ」があるのではないかという問題提起です。特に思考するという行為は、人間に与えられた特殊な力です。想像の世界では、人は何者にもなることができます。空を飛ぶこともできますし、学生時代に戻ることも可能です。要は、思考には制約がなく、無限に広がる自由な空間だということです。そして何より、言葉そのものを即物的な意味で理解するだけではなく、文脈やメタファーから真意を捉えるという特殊な力を持っているはずです。「月が綺麗ですね」という言葉で、「I love you」を表現する感性を失ってはならないのだと思います。

この20年で失われた思考力の種類

この数年では「AI」がテクノロジーの代表ではありますが、20年のスパンで考えると「インターネット」と「スマートフォン」が外せないキーワードです。また、ビジネスにおいても、2000年代前半にネットワークインフラも整備され、多くの一般社員が使いこなす時代へと進展し、働く環境が激変したと言えるのではないかと思います。紙を軸とするアナログ的な仕事から、メールやSNSツールなどのデジタル的な仕事へと変化し、その過程において、「使う必要がなくなった力」「日々劣化している力」の代表例を6つ挙げてみたいと思います。

私たちビジネスパーソンが今後伸ばしていくべき思考力とは何か

ここまで見てきたように、インターネットやAIを代表するテクノロジーの進化によって、私たち人間の思考力は「敢えて使わなくてもよいモノ」になりつつあります。一方で、自分の将来や組織が向かうべき方向性などの意思決定は、生身の人間が為すべきであると少なくとも私は考えます。そうした時に、テクノロジーに依存することなく、人間固有の思考力として磨き続けていくべき、意識的に伸ばしていくべき力を4つにまとめてみました。

今後の人材育成に重要なこと

私たちが身を置く現在は、ビジネスを包含する社会全体において、大きな構造変革の中にあると言えます。AIを代表するテクノロジーの更なる進化によって、「仕事の進め方の変化」ではなく「仕事そのものの変化」が訪れようとしていると言えます。本コラムでは、その影響によって生じる人間の思考力にテーマを絞って考察してきましたが、人材育成(特にリーダー育成)の文脈においても、従来のアプローチとは異なる何かを講じる必要性が高まっているのではないでしょうか。

この先の未来を予測することは不可能であるため、何か絶対的な正解を提示できる訳ではないのですが、少なくとも私たちリードクリエイトでは、上述の4つの領域の思考力については、これからの組織のあり方を前提に置いた際、外せないモノであると考えています。

これまで行ってきた階層別教育をはじめとする各種研修プログラムや、昇進昇格時の判定基準においても、改めて「将来のリーダーに求められる思考力とは何か?」を問い直す機会なのだと考えます。

まとめ

今回は、AIをはじめとするテクノロジーの進化がもたらす「人間の思考力への影響」をテーマに焦点を当てて解説しました。この記事を読んだ方が、少しでも人材育成やリーダー育成の未来に対する何らかの気づきに繋がっていたら幸いです。

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