2024年以降、「スキルベース」という人材マネジメントの考え方が話題に上がっており、私もIT業界を中心に複数の企業でその導入や可能性について議論をしています。
本コラムでは、改めて「スキルベース」の概念を解説するとともに、日本では社会問題になっている「管理職の罰ゲーム化」に対する処方箋としての可能性を考察してみたいと思います。
「スキルベース」の人材マネジメントのイメージは、「メンバーシップ型」と「ジョブ型」と比較してみると想像しやすいと思います。
両者の大きな違いは、人に仕事をつけるか、仕事に人をつけるかです。ジョブ型は、まず仕事や役割を前提に、組織サイズやポスト・ジョブの数が決まっている中で、人をアサインしていくことになります。従って、未だ多くの日本企業が行っている新卒一括採用との相性は良いとは言えず、苦肉の策として、入社から管理職手前まではメンバーシップ型で、成長が認められれば次の資格・グレードに上がり、管理職以上はポスト・役割数を管理し、空いたポストにアサインするといった、ハイブリッド型運用をしている会社もあります。
さて、ここまで「メンバーシップ型」「ジョブ型」「スキルベース型」の人材マネジメントについて説明してきましたが、少しテーマを変えて「管理職の罰ゲーム化」について触れていきます。
以前から管理職になりたくないという若手・中堅社員が増えているとの声はありましたが、最近はまさに社会問題にまでなってきたと言えます。この問題に対して、私たちリードクリエイトは、大きく2つの原因があると考えています。1つ目は「管理職の多重債務化」、2つ目は「管理職の準備と見極めの不足」です。
そして、この「管理職の罰ゲーム化」を解消するために有効だと考えられるのが、管理職の分業です。日本の大手企業の中にも、すでに取り組みを始めているところがあります。私たちリードクリエイトも管理職の分業化を推奨しており、特に事業推進と組織活性・人材育成を分業することで、管理職という役割の負荷を軽減するだけでなく、適性を見極めてアサインすることが容易になるのではないかと考えています。
今回紹介した「スキルベース型人材マネジメント」は、前述の通りジョブや階層に関係なく、役割遂行に必要なスキルを定義し、そのスキルを保有する人材をアサインすることで、組織運営を行う考え方です。これを全社的に運用することは非常にハードルが高くなりますが、管理職の役割分業に特化して運用すれば、ハードルは大きく下がります。ピープルマネジメントに求められるスキルは、大きく変わることはないでしょうし、タスクマネジメントはジョブ型を志向した企業であればある程度スキルの整理ができていると考えられます。
また、これまで職能資格制度を運用してきた会社についてくる、部下なし管理職(担当課長・担当部長など)が増えている問題も、タスクマネジメントを任せる管理職とすることで一定以上解消することができるのではないでしょうか。職能資格制度や役割等級制度を導入し、いわゆる複線型の管理職コースを設けている会社においては、第3の管理職として、運用に柔軟性をもたらすことにも繋がります。
従業員側にとっても、何でもやらないといけないライン管理職か、高度専門職たるスペシャリストのどちらかではなく、そこに第3の選択肢が加わることで、より自身のキャリアを選びやすくなるのではないかと思います。
「スキルベース型人材マネジメント」は、まだまだ日本企業での運用実績が乏しく、導入のポイントやメリット・デメリットが実践知として体系化されていません。ただ上記の通り、その考え方に則って、分業化を実現するための手段として活用し、「管理職の罰ゲーム化」を軽減していくことには、十分な価値と可能性があると考えます。
リードクリエイトでは、各社の現状や事業・組織ビジョン、人的資本基本方針などに基づいて、最適な人事制度や制度運用の仕組みをご提案いたします。お気軽にお問い合わせください。