過去の実績だけで選抜することが適切か、マネジメント適性をどう評価すべきか、そして現行の審査制度をどう更新すべきか――その問いが本件の出発点です。
専門性が高く求められる組織では、優秀な「実務担当者」を管理職に登用する光景が珍しくありません。
前述したように、F社の当時の審査内容は「上司推薦」と「役員へのプレゼンテーション」でした。
F社の業務特性上、実務経験や実績が欠かせないのは事実です。
しかし管理職としては、組織成果を創出していくためのマネジメント力が求められます。それをふまえると、F社の現状の審査内容はバランスが不均衡な状態になっていました。
こうした状況を踏まえ、リードクリエイトは「現状の審査は目線が過去に向きがちで、これから期待される管理職の適性やポテンシャルを判断する情報収集手段としては不十分ではないか」という問題提起を行いました。
これまでの実績は人事考課で既に評価されており、また上司推薦でもその評価がベースになっています。
他方、役員プレゼンテーションも、限られた資料と短時間の面談だけでマネジメントの力量を見抜くことは容易ではありません。どうしてもプレゼンテーション能力や断片的な行動の行動事実に基づく評価に寄りやすくなっています。
そこで提案したのが、「アセスメントプログラム」です。アセスメントプログラムは管理職候補者のマネジメント適性を客観的に把握することができる評価手法です。これまでの社内評価や実績も踏まえつつ、次のステージでも高いパフォーマンスが発揮できるのかを総合的に確認することができ、審査体系の刷新を実現できます。
加えて、アセスメントプログラムによって社外視点で候補者の力量を検証し、「社内で高く評価される人材が市場でも通用する力を備えているか」の確認も可能となります。企業は市場の中で他社と競争しているため、組織力を外部競争の文脈で強化する上で重要な視座でもあります。
アセスメントプログラムの導入については、経営層のおおむねの合意は得た一方で、懸念の声もありました。
これらの懸念を踏まえ、まずはトライアルとして5名の管理職候補者を対象に実施し、その結果を踏まえ正式導入に値するかを検証することにしました。
実施の結果、それは説得力を伴いました。
まず、人事考課とアセスメント結果の違いは明確に現れました。
人事考課は高いが、アセスメント結果は低い
人事考課は低いが、アセスメント結果は高い
といった違いが見られ、その要因についてもアセスメント内の行動を丹念に検証分析したうえでフィードバックし、本人や経営陣の納得を得るに至りました。
また、アセスメント内のさまざまなリフレクションやフィードバックが候補者本人に大きな気づきや学びを与え、行動変容への明確な指針になったとの声もあがりました。
こうして、「候補者のマネジメント特性や行動傾向が整理され、昇格判断や育成の材料として有効である」ということが確認され、「管理職昇格アセスメントプログラム」として正式に制度化されました。
アセスメントプログラム導入から3年が経過し、本施策は管理職候補者のマネジメント適性を把握する有効な手段として経営層や社員にも浸透し、信頼性の高いフィードバックを得られる機会としても認識されています。
アセスメントプログラム導入によって、以下のような変化も起こりました。
一方で課題も残っています。上司推薦の重心は依然として実務成果や案件責任者としての実績に偏る傾向が残っており、管理職としてのポテンシャルや能力開発という観点に着目する上司の数は多くありません。
また、会社の中期ビジョンの達成に向けた人材育成体系全体の見直しに際して、蓄積したアセスメントデータをどのように活用していくのかは、着手したばかりです。
リードクリエイトでは、このようにクライアントの人材選抜や育成の仕組みを共に見直しながら、組織にとってより適切な人材が活躍できる環境づくりを支援しています。本事例が、管理職選抜や人材育成を考える際の参考になれば幸いです。