プロジェクトの第一歩は、「経営人材・マネジメント人材の要件」を具体化することでした。
どのような力を備えた人物を育てたいのかが曖昧なままでは、人選も育成も不整合が生じてしまいます。
そこでリードクリエイトは、組織として求める人材像を定義し、その要件を起点に人選基準や育成方針を設計していくことをご提案しました。
人材像の策定にあたっては、経営層やマネジャーなど関係者の声、経営戦略との連動性、職場状況とのフィット感など、様々な要素を反映させる難しさはあります。
また、細かく深く入りすぎると収束が難しくなるとの経験から、そこに大きな時間をかけ過ぎないこと、普遍性と適度な粒度を担保するレベルで策定を進め、関係者の大筋の納得が得られるようにしました。
社員のキャリア志向については、無理に転換を促すのではなく、「専門性をより高いレイヤーで主導していくというキャリアもある」「環境変化に対応するためには選択肢を広く持つことが有効である」という観点を丁寧に伝えていくことを人事の皆様と確認し合いました。
本プロジェクトは、経営人材も含めた早期育成の検討を進めていたのですが、経営人材育成は時間軸が長く、その間に人材要件や経営環境も変わる可能性が高いため、まずはマネジメント人材に絞って施策を実施する方針にまとまりました。
また、マネジメント人材の育成は一朝一夕で適うものではなく、適切な準備期間が必要であること、一定の職務経験と自社・自業務への理解を備える必要もあるとのこと、また、会社として本気で早期輩出に取り組んでいこうとのメッセージ性も盛り込みたいこと、を踏まえ、入社5年目の社員を対象にすることにしました。
他方、人は経験を通じて成長するという原則から、各人の成長課題に応じた異動やローテーションも併せて進める必要があるものの、その運用はハードルが生じることも予想されます。
そこで、本プロジェクトに選抜された人材の育成方針を統括する会議体を設け、人事・HRBP・上司が密に連携を取り、対象者の育成方針を定めることにしました。もちろん、反発や不安の声も上がりましたが、変革に向けた摩擦は想定の範囲内と捉え、前進させること優先に動き出しました。
次に、人選基準の検討に入りました。
特定の上司の評価だけで決まるような仕組みでは、適性を正しく見極められないリスクがあります。
そこで、現場、人事、外部アセスメントといった多面的な観点から評価する仕組みを設けつつ、入社後5年間のパフォーマンスや評価を総合的に勘案し、一時的な評価に引っ張られない設計にしました。
さらに、育成においては「自己認識の不足」がもっとも大きな成長阻害要因となることが多いため、対象者が自身の強みや課題を客観的に把握する機会を設けることを重視しました。
また、育成を受講者本人だけの責任にしないよう、上述した会議体での方向性に沿って、上司とHRBPが三位一体となって支援する体制の構築も進めました。
一次選抜では、以下の3つを基準として活用しました。
その後、外部アセスメントにより、より精度高く適性を見極めていきました。
対象者にはまず、定義したマネジメント人材の要件を確認いただき、シミュレーションアセスメントを通じて自身の現状を可視化していきました。このプロセスにより、「何を開発すべきか」「自分には何が足りていて、何が不足しているか」が明確化されました。
アセスメント結果をもとに、
などを実施し、最終的には人材配置、経験付与、Off-JT の組み合わせによる成長支援の全体設計を進めていきました。
取り組み開始から3年目のタイミングで、初年度の対象者の中からマネジメント層への抜擢が生まれました。抜擢された方々からは以下のような声をいただいています。
一方で、全員がマネジメント人材への道に進んだわけではありません。途中離脱や退職に至った社員も存在しました。理由としては、以下のような内容が挙げられました。
これらは決して失敗ではなく、「施策の改善に必要な情報」として捉えています。
今回のプロジェクトを通じて強く感じたのは、育成施策に唯一の正解はないということです。対象者の多様性、現場の状況、人事の体制などによって、ハードルになるポイントは変わっていきます。だからこそ、施策全体のPDCAを回し続け、継続的な改定を行っていくことが欠かせません。
私たちリードクリエイトは、対象者の声、現場の反応、人事の運営負荷など多角的な情報を踏まえ、クライアントとともに伴走しながら、より良い仕組みへの改善を重ねていきつつ、今後も、同社のマネジメント人材育成がより成果につながるよう、長期的な視点で支援を続けていきたいと考えています。